クラスで一番スゴイやつ



なにか喋っている様子の爆豪くん。ツンツン男子が何を話しているのかわからないと言うと、オールマイトは小型無線でコンビと話しているのだと説明する。
建物の見取り図と、相手に巻きつけることで確保証明となるテープを持っていると付け加えた。

「制限時間は15分間で『核』の場所は『ヒーロー』に知らされないんですよね?」
「YES!」
「ヒーロー側が圧倒的不利ですねコレ」
三奈ちゃんが肩を竦めてオールマイトに不公平を進言する。
「相澤くんにも言われたろ?アレだよ…せーの!」
『Plus Ultr「あ、ムッシュ爆豪が!」
みんなでバッと手をあげて校訓の合唱、を遮ってビームマント(仮)くんがモニターを指す。
調子を崩されたオールマイトは表情こそいつもの笑顔を崩さないが、少し悲しそうにビームマント(仮)くんを見つめていた。

モニターの向こうでは爆豪くんがさらなる攻撃を仕掛けていて、お茶子ちゃんは同時に反対方向へ駆け出す。おそらく緑谷くんが指示を出したのだろう。
しかしそのせいで、緑谷くんは爆豪くんの蹴りをモロに食らったようだ。……と思ったら、蹴りつけた脚に確保テープを巻きつけているところだった。焦った爆豪くんの爆破を避ける。
すごい、すごい。攻撃を読んでいるのか反射で動いているのか、どっちにしても着地前に仕掛けられた攻撃をかわすなんて、並大抵のことではない。もちろん、滞空している不安定な状態で二撃繰り出すことができる爆豪くんもすごいのだが。

モニタールームもざわめいて、二人の攻防に全員が釘付けになっている。厚い唇が特徴的な体格のいい男子が、個性を使わず入試一位と渡り合っていると感心して素直な感想を言っていた。

一時撤退して身を隠す緑谷くんに爆豪くんが吠えかかる。ものすごく怖い。金髪に黒いメッシュの入った男子が「コワッ」と漏らしていて、怖いと思ってるのは私だけじゃなかった、となんとなく安心した。
イライラした様子で大股でうろつく爆豪くんは、もはや完全に敵だ。顔がやばい。
どうみてもヒーローの顔ではない。

一方、先ほど緑谷くんと別れたお茶子ちゃんの方に動きがあった。飯田くんを発見して柱の陰に隠れている。
緑谷くんの指示か合流を待っているのだろう。こそこそと飯田くんの様子を伺っていたが、なぜか急にブフッと噴出したので飯田くんに見つかってしまったようだ。どうしたんだろう、思い出し笑いだろうか。

お茶子ちゃんを見つけた飯田くんは何か喋っていて、追い詰められて手も足も出ない様子のお茶子ちゃんはジリジリと後ずさる。爆豪くんと緑谷くんの戦いに気を取られて気付かなかったが、飯田くんは飯田くんでお茶子ちゃんへの対策としてフロア一帯を片付けていたようだ。爆豪くんが飛び出していった時と比べて、余計なものが何一つ見当たらない。

お茶子ちゃんは緑谷くんと話しているらしい。この状況はかなりピンチだろう。触れたものを無重力にするという個性、綺麗に片付けられたフロアではほぼ封じられてしまった。
今のお茶子ちゃんが飯田くんとまともにやりあえば、いずれ確保されるのは必至。
爆豪くんと互角に渡り合えている緑谷くんも、お茶子ちゃんを確保した飯田くんが戦闘に加われば勝機はまずない。
その前に爆豪くんを封じたとしても、その後にエンジンの飯田くんを捕まえるのも、彼を出し抜いて核を奪うのも難しい。そんなことをしている内に制限時間が来て、ヒーローチームの敗北で終わってしまう。
「ピンチだね…」

逃げると見せかけて飯田くんを誘導して、確保テープの罠にかけるとか……でも障害物のないフロアで飯田くんと追いかけっこになって、うまく立ち回れるかはわからない。
飯田くんの方が早いのだから、誘導する前に捕まってしまう可能性の方が高い。

ここからの打開策を自分なりに考えていると、いつの間にか緑谷くんが爆豪くんに追い詰められていた。爆豪くんは手榴弾のような篭手を突き付け、何か喋っている。
なにを言っているんだろうと思って見ていると、オールマイトが焦りだした。
「爆豪少年ストップだ、殺す気か」という言葉に吃驚する暇もなく、爆豪くんが篭手のピンを抜いた。
瞬間、モニターが閃光で真っ白に染まったかと思うと、轟音とともにビル全体が揺れる。
「緑谷少年!!」と呼びかけたオールマイトにはっとする。そうだ、緑谷くんは無事だろうか。
何が起こったのか一瞬わからなかったが、おそらく爆豪くんの個性がコスチュームにより強化された大爆発だろう。
真正面からあんなの受けたら…とぞっとしてモニターを確認すると、土煙の中に吹き飛ばされた緑谷くんの姿があった。どうやら爆風で吹っ飛んだおかげで直撃を免れたようだ。
スーツの頭部は全て焼け落ちてしまったが、大怪我がないのは僥倖だ。ほっと胸を撫で下ろす。

そのあいだに核のあるフロアでもひと悶着あったらしく、お茶子ちゃんがゴロゴロと床を転がっていた。今の衝撃に乗じて核の奪取を図るも、失敗したというところだろう。

左手の篭手を構える爆豪くん。まさかまたさっきの大爆発をやるつもりだろうか。
「先生止めた方がいいって!爆豪あいつ相当クレイジーだぜ殺しちまうぜ!?」と焦るツンツン男子。全くその通りだ。クレイジー、おかしい。
ビルが壊れる威力の攻撃を、クラスメイトに平気で使うなんて信じられない。これは授業中断レベルだろうと思うが、オールマイトは渋っている。

「爆豪少年次それ撃ったら…強制終了で君らの負けとする」
次、次撃ったら、なんて。撃ってから止めるのでは遅いんじゃないか。取り返しのつかないことになったらどうするつもりなのだろう。
「屋内戦において大規模な攻撃は守るべき画嬢の損壊を招く!ヒーローとしてももちろん敵としても愚策だ、それは!大幅減点だからな!」
懸念したが、オールマイトの指導に爆豪くんは爆破の構えを崩した。

ほっとしたのもつかの間、爆豪くんはすぐにまた攻撃に移った。爆風を利用して飛びかかる、タイミングを合わせて攻撃をいなそうとした緑谷くんの目の前でもう一度爆破。その勢いで緑谷くんの頭上を飛び超えて背後へ回ると、空中で後方と前方の同時爆破をして背中への攻撃を加える。
たった数秒の出来事だが、その中でこれだけの動きをするには相当のセンスと緻密な計算が必要になる。なんでもないようにやってのける爆豪くんは、とんでもない戦闘能力だ。
一回目の爆風による跳躍から、空中で3回もの威力の違う爆破を使っている。轟くんと百ちゃんが解説と分析を話すと、金髪メッシュくんが才能マンだと眉をひそめた。
妖精くんは百ちゃんの意見に耳を傾けている、と思ったら胸を眺めている。おい集中しろ。

背中への衝撃に苦しむ緑谷くんに、間髪入れず篭手で横から殴りつけた。そのまま腕を掴み、反対側の手で連続した爆破の勢いをつけて床へ叩きつける。爆豪くん的には、今のはさっき投げられたお返しだろう。
しかし、どう見たってやりすぎだ。テープを巻けばそれで終わるはず、そして今の爆豪くんはそれを簡単に出来るはずだ。
ここまでやる必要などない。皆からも非難が飛ぶ。

緑谷くんは逃げ出すも、壁に追い詰められる。お互いに何事か叫び合っているが、不思議と圧倒しているはずの爆豪くんの方が必死なように見える。
同時に右腕を振りかぶり、全力で殴りかかる。
緑谷くんも爆豪くんも、ソフトボール投げで705mを記録した腕力だ。全力で殴ったら、お互い無事では済まないのではないか。

「先生!!やばそうだってコレ!先生!」
必死に説得する男子にやっとオールマイトが中止を呼びかける。しかし二人の勢いは止まらなかった。殴りあったと思ったが、緑谷くんの振りかぶった腕は爆豪くんではなく、天井に向いていた。
核のフロアの床が抜けて舞い上がる瓦礫を、お茶子ちゃんの個性で無重力化した柱で打ち付ける。
反応が遅れた飯田くんの隙を突いて、お茶子ちゃんが核に飛びついた。

「あ、」

核の回収で、ヒーローチームの勝利となる。


…そうか、逃げ出して追い詰められたんじゃなくて、爆豪くんをあの位置に誘い込んで、こうするように作戦していたのか。
「…緑谷くん、すごい」
訓練が始まって何度目かわからない「すごい」を、ようやく口に出す。

「ヒーローチーム…WIIIIIN!!」
オールマイトの判定が響く中、呆然と立ち尽くす爆豪くん。
その眼前に、個性の使用と殴られた衝撃により両腕を折って気を失った緑谷くんが倒れていくのが、スローモーションのように感じられた。


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夢主目線の原作沿いって原作の流れを追いかけるのに必死でキャラと絡める余裕ないし名前変換も出てこないし私が漫画読んだ感想喋ってるだけみたいになってるしこれは夢小説と呼んでいいのだろうか
今回の夢主は傍観者の立場だから、ってことで許して欲しい


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