「見えた?」
視力は、きっと人よりは少しいいほうだと思う。直感で。だけど、だけどそれとは全く関係ないところで、みんなには見えないものが見えてたりするんだよね。
たとえば、てのひらの赤い染み。
てのひらの赤い染み?
これってずいぶんまわりくどい言い方だ。だって、てのひらぜんぶが、赤いんだからさ。
「見えないよ、全然」
「そっか、ゴンには見えるかとおもった。」
「んー‥やっぱ見えないっ。なんか悔しい」
「お前ムダに負けず嫌いだよな」
「何それ。キルアにだけは言われたくないよー!」
ゴンはこれでもかってくらいにほっぺを膨らませてブーブー言った。言ったあといきなり笑いだして、何故か腹までかかえてる。とにかくめまぐるしい。
そこが、すき。
「ゴン、いつか笑い死ぬよ」
「それおもしろいね!」
「や、おもしろくないだろ!」
すきでしかたない。
だから失いたくない。
あのさ、ゴンに出逢うまではきらいだったんだよ、あかいてのひらが。でもいまでは、この赤いてのひらが、すごくありがたいとおもう。
だって、たぶんこの先すごい強いやつに出会ったりして、どうしたって敵わない相手でもやらなきゃならない時がきて、おれはその時ゴンを守ってやりたいんだ。ゴンのきれいなてのひらを、守ってやりたいんだ。
だからさ、このあかいてのひらがいまはすきだ。もう汚したくないとか思ってたてのひらが、ゴンを守るてのひらになったから。
「でもさ、キルアの手、きれいだねすごく」
おれ、ゴンのためならてのひらなんていくらだって汚せるよ。
ゴンがまたきれいっていってくれたら、それでいいよ。
〆
title/lis
20060917