どうかこのままで。
目ぇ開けないでくださいよ。
不規則な寝息を聞きながら安堵と不安。ぜんぶ手の届く場所にあるくせに、なにもつかめてないようなそんな感じ。めんどうくさいだけですねィ。こころなんてモンは。愛してるとか、俺だけのものでいてとか、メロドラマじゃあるまいし。
そんな台詞、たぶんあんたが死んじゃうかもしれなくても俺は云わない。そんな台詞云うくらいなら、いっそあんたの息の根を止めて、自分もその上にかさなったほうがよっぽどマシな気がする。
「土方さん。その寝顔、ちと無防備すぎですぜィ」
このひとと同じように寝息たてて、同じ夢をみて眠れたならどんなにいいだろうか。手を握って、お日さまの光をあびて、すやすやと眠れたなら、それはたぶんここちいいに決まってる。でもおれは、あんたとそんなふうになりたいとか思ってるわけじゃなくて。
「ひじかたさん」
気づいたら、眠るあんたの細い首に、そっと手をかけてた。
「バイバイ。ひじかたさん」
たしか、そんな甘酸っぱい夢だった。
夏の午後、白昼夢心中。
〆
20061010