ちょうど1時間前。
僕の部屋に来なよなんて言うから、めずらしいこともあるものだと思った。部屋に着いた瞬間、腕がぐるっとまわって背中でぎゅっと握りしめて、すっかり顔を胸に埋めた。ほんとうにめずらしいこともあるものだ。あしたはきっと空から星か月か、とにかく何かありえないものが降って来るんじゃないかと思った。

「自惚れないでよね」
「わかってる」
「たまたま、都合がいいんだ。」
「ん、わかってるぞ」

泣いてはいなかった。
ただ、雲雀の声は俺の腕の中でもごもごと鳴って、とても小さなものになっていた。何度となくこうして雲雀の肩を抱きしめたけれど、こんなにも雲雀自身をちいさく感じたのは、たぶん初めてで。抱きしめる腕に力をこめようにも、まったく加減がわからない。

「なぁヒバリ」
「やだ」
「まだ何も言ってない」
「どうせ了平の言うことはめちゃくちゃだ」
「そうでもないぞ」
「じゃあなに?」
「ん。どうかしたのか、と。」

おおよそ見当はついていた。ただ、雲雀のくちから聞かなければとおもった。

「とれないんだ、血の臭い」

俺の背中でぎゅっと握り締められる雲雀のてのひらに、すこしの自惚れを感じてもいいのだろうか。いよいよ泣き出した雲雀の髪をやさしく撫でながら、そればかりを考えていた。










マフィアなふたり。
title/星空
20061020
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