「やるよ」
「ん?」
「そのへんで拾った」
夕陽が、山本を包んでいた。綺麗だとか不覚にも思っちまった横顔は、遠目からでも判るほどにむくんでいて。なあ山本、放課後にひとりで泣いたりするのはルール違反じゃなかったのか。それとも、そう認識してたのは俺だけだったのか。どっちにしろ、おまえが笑ってねーとなんか調子狂うから。
だから、声を掛けた。
「そっか、土か。うん」
「泣くなバーカ」
「おう」
唐突に重なった唇はしょっぱくて。なんだか俺まで泣きたくなった。
「サンキューな」
ノーヒットノーラン
山本の夏が、今日終った。
〆
校庭の土、高3の夏
20070314