あの人が手に持っているのは確かに刀だったはずなのに。触れればぱさりと腕が落ちて、たちまち赤い血があふれてしまうような、刀だったはずなのに。
それなのになぜか、刀はまるで体のいちぶみたいにしなやかに舞って、きらきらと午後の陽を反射させていた。

土方さんとゆう人は、まったくどうして、こんなにもこんなにも、俺のこころをはなしてくれないのだろう。

わかっているくせに、その刀で切って捨てることもしてくれない。

「いつまで見てんだ?」
「あれ、気付かれてました?」
「おまえの気配ぐらい気付けなきゃ、刀振り回す意味も無いだろうな」
「わ。今さりげなく俺が全否定されてるような気が‥」

こうしてことばを交すあいだも、やっぱり刀はしなやかで、聞こえるのは微かな息遣いと、刀がひゅうと、空を切る音だけだった。


ねぇ土方さん。
もしもその刀ごと抱きしめたら、ひと思いに切って捨ててくれますか?
土方さん。











20070101
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