この部屋の、この時の流れを、いつからか永久不変であればいいのにと思うようになった。壁際で膝をかかえ体育座りしてる黒いかたまりが、なにか主張するわけでも無く、なにか不満を述べるわけでも無く、ただ俺の視界のすみっこにずっと在ればいいのにと、こんなにも願ってしまう。
さてね、この感情は果たしてなんと呼べばいいものなのか、俺としても見当がつかない。家族的な愛でも、恋愛的感情でもない。だけど、仕事上なんとなく、と言ってしまうのは違う気がする。
ただ、いままで此処に在ったもので、ましてそれが自分にとって不可欠だと呼べる位置にまで来ているとすれば、急に居なくなってもらっては居心地が悪いんだ。交わす言葉も、通わせる想いも、繋ぐ掌も、自分たちは何ひとつ持っていないとしても、どうせならできるだけ、今が永く続けばいいと願わずにいられない。

「宵風、んなとこで寝んな」
「なんで」
「疲れる」
「誰が」
「おまえがだよ」
「ゆきみは」
「は?」
「ゆきみは疲れないのか」
「おまえがベッドで寝てくれたら、俺の疲れがひとつ減るけど」
「そっか、おやすみ」
「おやすみっておまえ」

いつか、どこにもうまく当てはまらないこの感情を、声に出してみる時が来るだろうか。答えはきっとおそらく絶対に否だ。宵風が宵風としてここに在るうちは、間の抜けた鼻唄といっしょに、小さな欠片にでもして吐き出してけばいい。
そしてほんとうにいつか、宵風の中がその欠片で満たされる日が来たなら。その時はふたりして、また鼻唄でも歌ったらいい。










20070616
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