朝露に濡れ、日を浴び、宝石のように光る草花を。
虫の声、午後の訪れとともに薫る雨上がりの土の匂いを。
見上げれど、月の見えぬこの部屋の窓を。
そんな他愛のないものたちを、瞬間を、桂は好きだと云う。思わず笑みの零れるようなほんの刹那、高揚なのか静寂なのか、なんとも表しがたい心の流動が、桂は好きだと云う。

「ふうん。そう」

誰だっていいわけじゃない。桂が言うから、俺は耳を傾ける。確かめる。同じように感じ取れなくたっていい。ただ桂が見てるものがなんなのか、知りたいだけ。

「そう思わないか?」

好きだと語る桂の横顔が、俺は一等好きだから。だから知りたいだけ。






「おなかすいたね」
「すかぬ」

さて。
桂の声は鈴と鳴る。たとえば庭先で花が揺れるみたくかすかな音でふいに、ぽつんと。返される言葉なんてなんだってよくて、それが部屋にすっと溶けて時が進んで俺がこっそり笑って寝返りうって。畳の上でごそごそっとしてくすぐったい日常を持て余す。
それがいい。
それだけでいい。
だからね、

「なあヅラぁ」
「ヅラじゃない桂だ」
「ヅラはきれいだよねーいろいろさ」
「きれいではない、桂だ」
「うん」
「綺麗などではないぞ、銀時」

だからさ、綺麗をすきだって言えるきれいなきれいなヅラでずっと居てくれたらいいな、ってさ。
そんなふうに想うよ。










20071001
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