ぐるりと見渡しても、そこにはただ緑のグラウンドがあるだけで。しん、と静まり返った夜の中に、ガサガサと芝生を歩く音だけが響く。

「誰だー照明落とさずに帰ったの」

呟いてみても、あたりまえのように返事はなく、また静けさが戻ってくる。さきほどまで走り回っていた7番は、どうだろう、某か手応えを感じて帰路についただろうか。それとも、イメージに追い付かない自分に腹を立てただろうか。

「あー。こんな気持ちのいい夜には、ボールのひとつでも蹴りたいねぇ」

どうせなら。ひとり、誰の目も気にせず自由に走れた夜には、笑顔で帰路につき、やさしい夢をみてほしいとおもう。

「監督、まさかグラウンドで朝まで眠る気ですか」
「おお、まだいたのか。」
「ちょっと休憩です」

きらきらと輝く瞬間をできるだけ永く、その手につかんでいてほしい。
(寝転んだここからは、世界に繋がる空がこんなにも近くに見えるよ、椿)










title/mutti

110711
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -