本を読もう。できるだけたくさん。俺は日本人のくせに、きらきらと輝く、しなやかで美しい、そんな日本語のほんの一部しか知らんから。
自分の中にある哀しみに似たなにかや、伝えたい愛に似たなにかを、ちっともうまく言い表すことができない。もどかしさだけが胸の奥で積み重なって、大切なこの感情が、なんやぺしゃんこになりそうで。
「ふたりきりなんて、えらいこっちゃ。どきどきやんなあ、奥村先生」
「そう?」
「連れないなあ奥村先生は」
「連れるよ、案外」
いままさに、何気ない会話の奥でふつふつと湧いてくる、あったかくて少しくすぐったいこの気持ちはなんやろうか。できることならば名前をつけてあげたいと思うので、奥村先生の隣で、こうして本をたくさん読もう。ぴったりの名前がみつかるまで、こうして隣にいよう。
title/蘇生
111128