高杉はいつも、世界なんて糞くらえと、そっぽを向いて鼻唄をうたう。
「高杉」
自分の膝にあずけられたあたまをそっと撫でる。そのまま首筋もちょこっと撫でてみる。えっちなことしようよ、ってアピールしたつもりだけど、どうだろう?鼻唄の調子もそのまま、息づかいも、鼓動も、ぜんぶ、そのまま。少し、悔しい気もするけれど。いまはこの膝枕が、高杉からもらえるいちばんのしあわせ、かもしれない。
「ねぇ、たかすぎ」
猫みたいにまあるくなった君の背中。鼻唄は、もうきこえない。
「寝ちゃったの?」
いっそこのまま、世界とひとつになれたなら、それもいいかなぁ。時間の隙間にすっとおじゃまして、ふたりの時間だけを、止めちゃえたらいいのに。
「なーんてね」
やさしく眠る隻眼にキスしたら、鼻唄のつづきをそっとうたおう。
title/白群
110821