オレンジの魔法に、僕は吸い込まれる。まっ暗闇の夜に浮かぶ、淡いいくつもの提灯。わるいこわい夢がこちらに手招きをしている。迷い込んだらどうなるのだろう。恐怖の裏にはいつだって好奇心が隠れていて、僕はそれを必死で押さえながら夢と現の歪みに流れる音をひとつひとつ拾い上げる。お囃子の太鼓はどんどんと胸を打って、僕をこちらに引き留める。浴衣で踊るひと。しゃりしゃりかき氷。真っ赤なリンゴ飴。すべてを見守るまるい月。

「なんて素敵なんだろう」

僕はまた、知らず知らず涙して、音の波にゆられている。








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110804
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