夏の日差し、乾いた空気。
ぴんと張りつめていた気持ちが、ふと和らぐ。半分開けておいたベンチに、達海猛が座ったのだ。ただそれだけで、こんなにも穏やかになれるのはなぜだろうか。
このひとは、なにか、不思議な処方箋を持っている。

「アイス食う?」
「じゃあいただきます」
「よろしい」

すこし、はにかんだ横顔。
迷いのない眼差し。
彼のあたまの中には、いったいなにが広がっているのだろう。

「なに見てんの」
「や、その」
「俺はね、サックラーのこと考えてたよ」
「え」
「うん、考えてた」

あーハズレだ。食べ終えたアイスの棒をコンビニの袋へしまうと、私を見るなりちいさくため息をつく。困ったな、という時の、彼の顔だ。

「サックラーさぁ、」
「はい」
「アイス溶けてるって」
「本当だ」
「もうさーいらないなら俺たべちゃうよ」

いつか私も、彼に効く不思議な処方箋を持って、こうして隣に座れるんだろうか。
なんでもないただの昼下がりに、やわらかな笑みを持って。








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