不愉快だった。
なにがって、大蛇丸の全てが、だ。
まるで己のモノだと主張するかのように久遠の肩を抱くその行為も、面白そうに口元をゆがめるその表情も、なにもかも。
このままクナイを横に一振りして、首を切ってやりたかった。
静かに激昂しているオレに気づいてるのかそうではないのか、大蛇丸はただ楽しそうに笑っている。
そのまま久遠を地面に降ろして、彼女の首に鋭い牙が覗く蛇を近づける大蛇丸に、舌打ちしたくなった。

イタチ兄さん、と久遠が嬉しそうに笑った。
なにか鈍い痛みが胸を打つ。
久遠はオレ達のモノだ。無意識に思った。誰にも渡すものか。


「アナタが構えるクナイを一ミリでも動かしたら、・・・分かるわよね?」
「・・・随分と姑息な手を使うようになったな、大蛇丸」


久遠が首に近づく蛇に気が付いて顔を青くした。次いで大蛇丸を睨みつける彼女に、少しだけ可笑しさがこみ上げる。こいつはここでも"久遠"だったのだろう、あの怖いもの知らずで変態で、何故か惹きつけられるような。

ゆっくりとクナイを降ろせば、大蛇丸は笑って久遠の肩を抱いたまま数歩後退した。
当たり前だが、目は合わなかった。不安げにオレを見上げる久遠とは合ったが。


「気に入ったのよ、この子。アナタ達が依存する理由も兼ねて知りたいしね」


依存、だと。
大蛇丸の言葉に若干目を見開く。依然弧を描いたままの口元から、長い舌が覗いた。

依存。他のものに頼って生きること。
少し、いや、大いに納得してしまった。久遠がいることが当たり前になっていた暁にとって、久遠の存在はもう必要不可欠で。
そうか。依存、だったのか。

どちらにしろ、久遠を連れ帰る事に変わりはないが。

デイダラの起爆粘土か、サソリの傀儡か、大蛇丸のアジトがグラグラと揺れている。早くしないとここも危険だ。
らしくなく顔を歪める久遠に少し笑って見せれば、久遠は目を見開いて安心したように笑い返した。

オレは袖に隠れた手を出して、人差し指を大蛇丸に向けた。大蛇丸の目が、そんなオレの手を捕らえる。かかった、な。


「悪いが大蛇丸、これはオレ達の拾いものだ」
「、・・・!!」


こいつにそう長く幻術は使えない。
大蛇丸の頬に軽く拳を入れて久遠を引き剥がせば、腰にまきつく彼女の細い腕。少し懐かしかった。

遅れてやってきた鬼鮫に牙を剥く久遠を横抱きにして、オレ達は地面を蹴った。


「また騒がしい日々に逆戻りですねぇ」


鬼鮫の言葉に珍しく笑みだけをこぼした久遠に、どうしようもなく胸が締め付けられた。
ああ、これが愛おしいと言うのだろう。
漠然と思った。

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