まさか本当に、この子のためにあの暁が動くとは思わなかったわ。

聞こえた爆発音に、私は口元がだらしなく緩むのをとめられなかった。
あの、暁が。随分と人間臭くなっちゃってるじゃないの。

しばらくしてカブトが連れ戻してきた久遠は、やっぱりいつ見てもなんの変哲もないただの女の子。私が言うようなことではないかもしれないけど、"変態"なところ以外はなにか特出したものはない・・・、否。
この子には忍術も幻術も効かなかったわね。
是非その類稀なる血を摂取して、研究してみたいものだわ。

それにしても、


「こんな辛気臭いとこやだー!!サスケに会いたーいいい!!」


やれやれと、私の傍でカブトが肩をすくめた。
この少女は、黙るということを知らないらしいわね、にぎやかなのは嫌いじゃないけど。
笑いながら久遠を見る。
目が合った彼女は、それはそれは嫌そうな顔をして顔を背けた。
まあ、蛇の恐怖を植えつけたのは私だものね、当たり前の反応だわ。


「ダメだよ。不意打ちとはいえ、サスケくんはキミを逃がしたんだ。サスケくんとふたりにさせるわけにはいかない」
「けちなカブトなんかハゲちゃえばいいんげふんっ!!いえ何も?」


鋭利に細めた眼光におびえあがった久遠が、居住まいを正す姿に思わず笑ってしまった。
実験うんぬんはぬきにしても、この子はどこか面白味を感じる。
・・・気に入った。


「私の傍から離れないこと・・・いいわね?」


驚くカブトと、しかめっ面の久遠。

別に大蛇様にそんなこと言われてもきゅんと来ないしー、とぼやく彼女の頬に手を添えれば、ぎこちない笑顔でヨロシクオネガイシマスと会釈した。よろしい。
鳥肌がたっていたことは、触れないでおいてあげるわ。


「大蛇丸様、あなたがそのような面倒事をすることは・・・ボクがこの子の監理をいたします」
「面倒事だと思うなら、こんなこと言わないわ・・・賢いアナタなら分かってるハズ」
「ですが大蛇丸様・・・!」
「カブト」
「、・・・分かりました」


袖から覗かせた蛇に、カブトは渋々引き下がる。

未だ不満げに頬を膨らます久遠の腕を取って部屋を出ようとした、その時。
ドゴォン、と凄まじい爆発音がアジトに鳴り響き、揺らした。
静かにカブトを振り返る。カブトは大きく目を見開いて、首を横に振った。
敵に情けをかけるなんて、カブトらしくないわね。

崩れ落ちてきた岩から久遠をかばうように抱き込む。
腕の中で、彼女が小さく震えたのが分かった。デイダラ、と呟くのも。


「・・・ハァ、カブト、アナタが計算ミスするなんて珍しいわね」
「・・・すみません」
「いいわ、どうせこのアジトもそろそろ出ようと思ってたところだし。アナタはサスケくんのところに行って」
「分かりました」


身を硬くして動かない久遠を横抱きにして、地面を蹴る。
すぐに馳せ生じたサスケくんは、私の腕の中にいる久遠を見て少しだけ驚いたように目を見開いた。
スピードは緩めない。
笑いながら手を振る久遠に、サスケくんは小さく舌打ちした。


「いったん西アジトに移るわよ。この子は私が連れて行くわ。各々で目的地に集合して」
「・・・大蛇丸、久遠は」
「あらいつの間にそんなに仲良くなったのかしら?でもダメよ、私が連れて行く」
「・・・えー」


腕の中で小さく不満の声を漏らす久遠を一睨みして黙らせる。
渋るサスケくんの背中を押すカブト、最後まで納得のいかない顔のままサスケくんは最後に久遠を一瞥して瞬身で消えた。

さて、私達も―――


「―――久遠を離せ」
「・・・!!」


ひやりと首にあてがわれた刃物に、私は思わず笑いそうになった。
いかなるときでも、邪魔者は現れてくるものね。
それが、アナタなんてね・・・。


「イタチ兄さん・・・!」


会えて嬉しいわ、イタチ。

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