「ちょうど良かった。彼のその手のひらの仕組みも気になっていたところだ。キミと一緒に実験対象になってもらおう」


一瞬で芽生えた殺意が、一瞬でもぎ取られる。
知ってるつもりだった、カブトはこういう男だ。
目の前にいる人間の一挙一動を見逃さず、その心境を憶測だが確実に読み取る。
そして、不利になるような言動で有無を言わせない。
どんな卓越した忍でも、簡単にはできないものだ。


「・・・どうする?彼も一緒に実験対象になってもらうか、・・・キミひとりでここに留まるか」
「耳貸すな、久遠・・・、っ」
「っデイダラ!!」


決して大袈裟などではなく、完璧に毒が回ってきてるのだろう、目に見えて顔をしかめるデイダラに焦りばかりが募っていく。
デイダラの顔は段々青ざめてきてて、毒とかそんなものにあまり詳しくないあたしでもやばいと直感で感じた。

なにもできない。悔しい。


「ここに解毒薬がある」


ちゃり、と音をたてて懐からそれを取り出したカブトは、得意げに笑った。
予想はしていた。きっとそういう駆け引きになる。
きっと答えなんて最初から決まっていても、やっぱり怖いし帰りたい。
でもそこに、デイダラがいなくちゃ意味がないから。


「、久遠っ・・・!」
「せっかく迎えに来てくれたのに、ごめんねデイダラ。交渉成立、ただしデイダラに解毒薬飲ませるまであたしはここにいるから」
「フフ、話が早くて助かるよ」


立ち上がろうとした手を、毒が体中に回ってるとは思えない力で掴まれた。
苦しそうな顔で、苦しそうな声で、行くなとかすれた声を出すデイダラに、不覚にも泣きそうになった。
結局あたしは、デイダラが、暁のみんなが大好きだから、愛してるから。
自分を犠牲にとかそんな偽善とかじゃなく、本当に心からデイダラに助かってほしいだけなんだ。
そのためなら、なんだってできるだけなんだ。


「大丈夫、デイダラ、あたし結構Mっけ備えてるからさ。体いじられるのくらいヘーキ」
「だま、れ・・・クソが、うん・・・!強がって、んじゃ、はぁ・・・、ねーぞ!」
「・・・っ、ほら、手ぇ離して。毒が回っちゃうから・・・!」


突き放すのは得意でしょ?デイダラいっつもハグさせてくんなかったもん。
冗談交じりの笑いも一睨みで強制的に黙らされる。

シビレを切らしたカブトが、黒い笑みを浮かべながら近づいて来るのが分かった。
このままだとデイダラが危ない。
咄嗟に判断したあたしは、デイダラの手に強くつめをたてた。
不意の攻撃に対応できなかったデイダラの手が、あたしの手を解放する。
瞬間に動けないデイダラから身を離したあたしは、カブトのもとに走り寄った。


「久遠!!」


お願いだから、そんな悲しそうな、悔しそうな声であたしの名前を呼ばないでください。
いつもの、デイダラでいてください。

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