どこからか、地下なのに肌寒い風が吹き抜けた気がした。

い、一触即発とは、このことを言うのか・・・!
ここでボケるのは止めとこう。
カブトじゃなくてデイダラに殺されてしまう。


「は、実験素材だ?ざけんな」
「ボクは冗談は好まないのでね。多少手荒な事をしてでもその子は返してもらうよ」
「返してもらう?コレはもともとこっちのなんだよ。寝言は寝てから言え、うん」
「・・・キミはもう少し、自分が置かれている状況を察した方がいい。ここはボク達のアジトだ」


真横の壁がいきなりスライドして、隠された兵器が露になる。
全身から血の気が引いた。
だってこれは、サソリさんが使うような・・・


「串刺しになれ」
「チィッ・・・!」


苛立ちを露に舌打ちをしたデイダラに抱き込まれる。

これはもしかしなくても、あたしを庇って―――・・・


「ッデイダラ!」
「暴れんな、うん。恐くねぇから、安心していいから。ただ、目ぇ閉じてろ」
「だっ、ちょっ、ダメ!、わ」
「黙ってろ」


デイダラの腕があたしの視界を覆う。強制的に暗くなった視界、寸前、鈍くきらめくたくさんのクナイや手裏剣が放たれるのを見た。

ドォン、なんてドラマやアニメでしか聞いた事のなかった音が響く。
爆風か、浮遊感に包まれたと思えばデイダラの呻き声と共に地面に叩きつけられた。
なのにあたしはどこも痛くない。
考えなくても分かる。


「デイダラッ!!!」
「っく・・・、」


あたしを庇ったデイダラの身体中は、致命傷を避けてはいるものの傷だらけで。
所々血がにじんでいた。

煙の向こうにいるカブトを睨む。
あたしのデイダラちゃんをよくも・・・!


「へぇ、キミ若いのになかなかやるね。殺れなかった」
「カブトあんたあたしのデイダラをよくも傷つけてくれっぐぇぇ!?ちょ、苦し!」
「頼むからムード壊すんじゃねぇ・・・うん・・・」


依然あたしを抱えたまま腕に力を入れたデイダラにあたしは悲鳴を上げる。
抱き締めてくれるのは非常に嬉しいけど度を超してる、痛い、苦しい!


「・・・随分と、その子に依存してるみたいだね」
「なんだその嬉しすぎる情報。カブトそこんとこ詳しく分析して教えて」
「もうお前黙ってろマジで。うん」


いやんそんな真面目な顔で言わないで。

依存だなんてそんなバカなことあるはずないなんて事は分かってる。
あたしは、迎えに来てくれただけで、それだけがただ嬉しいんだから。
それにハグまでできたし、ぐへへへへおっといけねぇ素が。


「さて、茶番はここまでだ。キミはその子を庇いながらいつまで威勢を保てるのかな?ボクが有利なのは変わらない」
「ちゃんと自分で戦えよカブトの卑怯者!」
「なんとでも言うがいいさ。キミが実験素材になる運命は変わらない」
「変態がいます!おまわりさーん!」
「、本当に癪に触る子だね」
「っ久遠!」


びゅ、と飛んできたクナイからあたしを庇ったデイダラが呻き声を上げる。
驚いて見上げると、肩に深々と刺さったそれ。
じわじわと滲み出る血に、頭がどんどん冷えていく気がした。


「デイダラ、え、ごめ・・・ごめんデイダラ、痛くない、わけないよね・・・!」
「怪我ねぇか、久遠」
「・・・な、い・・・」


デイダラの肩越しに見えたカブトの笑った顔に、怒りがフツフツと沸き起こる。
同時に、なんだか嫌な予感がした。


「、ぐ・・・う・・・!」
「デイダラ・・・!?」
「毒だよ」


笑いながら告げたカブトに、殺意さえ芽生えた。

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