あれは。
あの赤い頭は。


「・・・、サソリさん・・・!」


暗闇に慣れてきた目が、赤い頭を捉える。
どうやってアジトが分かったのかとか、どうやって潜り込んで来たのかとか、そんなことはどうでもよかった。
迎えに来てくれた。ただそれだけが嬉しくて、今すぐ駆け出して行ってサソリさんに抱きつきたい。
ありがとうございます、マジで大好きです愛してますなんて言ったら、やっぱり呆れの目を向けてくるのかな。そうであってほしいな。
それで安心するの。
ああ、サソリさんだって。


「・・・サソリ・・・?誰だ。イタチの連れか?」


隣であたしの肩を抱いたまま、サスケがスッと目を細めたのが分かった。
その問いに返ってくるのは、面白くなさそうな声。


「だーれがイタチの連れだって?・・・うん」
「え、デイダラ!」


後ろから聞こえたデイダラの声に、首だけ動かして視線をやる。
うっすらと、黄色い頭が見えた気がした。
デイダラも来てくれたんだ、嬉しさが増してこんな状況にも関わらず口許が緩んだ。


「・・・フン。口は割らない、か」
「好き好んで内部の情報渡すかよ、うん」


ぐ、とあたしの肩を抱くサスケの腕の力が強まる。
ぼんやりと見えたサソリさんの顔が、わずかにしかめられた気がした。


「・・・今一度言う。そいつの肩に回った手を、離せ」


厳かな声が部屋に響いた。
ゴソゴソと布がかすれる音がする。きっとデイダラが起爆粘土を装備してるのだろう。
こんな不利な状況でも動じない、サスケの精神はさすがだ。


「サスケ神経図太いね」
「てめー久遠、空気読めクソが」
「なっ、サソリさん酷い!」


クソだなんて!
クソってう○このことなんですよ、知ってた!?


「マジで黙らねーと喝入れっぞ、うん」
「ごめんなさい」


デイダラにまで叱られたあたしは、素直にお口にチャックした。
お口はミッフィー精神。

隣で小さくため息をつくサスケ。
これはあたし、完璧に呆れられてるよね、そうよね。


「・・・好きにしろ。大蛇丸が勝手に拉致って来たんだ、オレは微塵も興味がない」
「う、わっ・・・!」


ガシッと頭を掴まれて、サソリさんの方に押される。
バランスを崩したあたしはそのままサソリさんに抱きつくようにダイブした。なんだか懐かしくて、自然と笑みがこぼれた。


「サソリさぁぁぁぁあん」
「・・・うるせぇ黙れ」


言いながらも背中に手を回してくれる。
サスケの背後からこっちに瞬身してきたデイダラにも抱きつけば、まさかのデイダラも背中に手を回してくれた。
嬉しすぎて鼻血が出そう。


「イチャイチャすんのはよそでやれ。オレの気が変わらないうちに失せろ」
「言われなくてもそうするつもりだ。デイダラ」
「おう。行くぞ久遠」
「うん!・・・あ、サスケ」


もう一度だけ振り返って、眉をひそめるサスケに抱きつく。
話相手になってくれてありがとうと笑えば、サスケも少しだけ笑ってくれた。

最後に、ひとつだけ。


「目に見えた事だけが、真実とは限らないよ?」


あの、優しすぎるお兄ちゃんを少しでも分かってほしいから。


「・・・久遠」
「はい?」
「・・・いや、」


またいつか、聞こえるが聞こえないか程度の音量で吐き出された言葉を耳で拾ったあたしは、写輪眼をひっこめたサスケに笑ってみせた。
会えるよ、サスケが憎しみを抱いている限り。


「行くぞ」
「早くしろ、うん」
「はーい」


またいつか。

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