持てるだけのホットケーキミックスを買ってぱんぱんになった袋は、一人で持つには重すぎた。
馬鹿なことをしたなんて後悔してももう遅い。レジのお兄さんのぎょっとした顔を思い出して、一人恥ずかしさに身をよじる。
よたよたと歩きながら学校までの道のりを歩いていたら、すれ違う人すれ違う人みんなにいぶかしむような目で見られてますます恥ずかしい。ここで白馬に乗った王子様(サソリさんとかイタチとかデイダラとか!!)がやってきて手を差し伸べてくれたら・・・いやお姫様抱っこしてくれたら・・・!!!
なにそれ最高のシチュエーションじゃん!あたしはそのためにこんな重たいもの持ってるんだ!さぁ早く王子様、お馬さんに乗ってなくてもいいからあたしに手を差し伸べて、


「、久遠?」


来たぁああああぁああああ!!!
背後から呼ばれた名前に思いっきり振り返る。
するとそこに居たのは、


「・・・、え、・・・ひだん、?」


王子様なんてものとはまったくかけ離れた風貌の、


「久遠!!」


十年前よりもっとずっと大人っぽくなった飛段がそこに居た。
思わず持っていたものを地面に落として駆け出す。大きく両手を広げた飛段の逞しい胸に飛び込めば、痛いくらいに抱きしめられた。
飛段、飛段だ、飛段!


「飛段ーーーー!」
「でっかくなりやがって!」
「飛段のほうがね!元気にしてた!?」
「見てのとおりだろうがよぉ!ああくそ、久遠、久遠!」


ぎゅうぎゅう抱きしめられる、この感覚が懐かしい。
いつでも加減を知らない飛段に何回も名前を呼ばれて、その度に返事をして、顔を見合わせて二人で笑った。

今日もきっと、いい一日になる。
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