ドレスを買って帰って来た私たちを、神妙な顔をした小堀さんが出迎えてくれて嫌な予感がした。こういう、嫌な予感に限って当たってしまうっていう妙な得意技が今回も発揮されないといいけど、と思いながら「どうかしたのか?」つられて神妙な顔になりながら問う森山さんの後ろから、会話を聞き取る。


「どうかした、というか・・・まぁ」
「?小堀が言いよどむほどの何かが起きたのか?」


スッと警戒態勢に入る黄瀬と森山さん。思わず体を強張らせれば、小堀さんは慌てて「あ、いや違うんだ、あー・・・違わないけど、」なにが起きたんだろう。
どたどたと奥から出てきた笠松さんが、大きな声で私の名前を呼ぶ。え、異性恐怖症どこに消えたの。しっかりと目が合って、乱暴に腕を掴まれる。え、まじで恐怖症どこ行ったの。

ミーティングが行われた部屋に引っ張り込まれる。テーブルの上には一台のタブレットがあって、口元を引き結んだ早川さんがそれをじっと見つめていた。
《楸さんかい?》機械から聞こえてきた声音に、思わず「げっ」と女子らしからぬ声を出してしまった。
腕を掴んだままの笠松さんを見上げる。彼は真剣な瞳でタブレットを見つめたまま、「ああ。連れてきたぞ」と私の背中を押した。

赤司がわざわざ連絡を寄越してくるって、どういうことなんだろう。さっき感じた嫌な予感は、もしかしなくてもコレか。つくづく必要の無い特技だ。


「なんですか?」
《パーティーまで時間がないからいきなり本題に入らせてもらうが、大丈夫かい》
「はい」
《今回の件、作戦は君が考えろ》
「・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
「っハァ!?」


大きな声は、後から部屋に入ってきた黄瀬のものだ。なるほど、小堀さんがあんな顔してたのは、この赤司の無茶振りのせいか。笑えん。
「っちょ、赤司っち」黄瀬がこっちに近づいてくる。それをぐっと押しとどめたのは、森山さんだった。


「話、続けてろ」


笠松さんが顎を使って促しながら森山さんが抑えてる黄瀬に蹴りを入れる。ざまあ黄瀬。でも痛そう。って、今はそんなことじゃなくて。


「なに、言ってるんですか。作戦ならもう、笠松さんたちが考えて・・・」
《ああ、さっき笠松さんの口から直接伺ったよ》
「なら、なんで」
《苦渋の決断とは言え、罪の無い人間まで殺してしまうのは我々の意思に反する》
「・・・・え・・・」


赤司の言葉に驚いて早川さんを見る。彼はぐっと眉根を寄せて、「室内にガスを流す方法しか、大勢を一気にこ(ろ)す方法が思いつかなかった!」・・・ああ、そういう、こと。
でも、私に、どうしろって言うの。


《君がそれを、考えるんだ》
「なん、」


なんで、どうやって、なんで私が。
そう言いかけて止めた。言葉にできなかった。機械越しに命令を下す赤司でさえ、方法がわかっていないのか。そうじゃないはずだ。彼はここに居る誰よりも、賢いんだから。
ならなんで私に託すのか。

試されてる。私の頭が、どれだけ冷静に、正常に、働くかを。

ヘテロクロミアの瞳にじっと見られている感覚がした。・・・考えろ。考えて、悪い奴らだけを殺す方法を。


「・・・増援とかは」
《それを望むならすぐに派遣できる》
「わかりました」
《楸》
「はい」
《期待してるよ》


赤司の言葉が、重く、心臓に圧し掛かる。「・・・・・はい」小さく返事をすれば、通信は一方的に切られた。
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