「ふぁああああああ!やっばい!イタチやっばいね!」


大きな口をあけて、丸い目をもっと丸くして、久遠は俺の手の中にあるそれを見つめた。
俺やサソリ、デイダラを追いかける時よりも純粋に興奮しているようだ。

雪が積もれば、外で遊ぶ。こいつが誘ってくる前からわかりきっていたことで、コートや長靴など用意周到なこの院は晴れの日は必ずといっていいほど子どもたちを庭に出す。
積もった雪に飛段と頭から突っ込んでいくあたり、本当に馬鹿な奴だとは思うけど愛おしさは変わらない。
俺はそんなにはしゃいで遊ぶタイプではないから手で小さな雪だるまならぬ雪うさぎを作っていたら、「イタチもあそぼうよ!」と駆けてきた久遠に手元を覗かれ冒頭に至る。


「やばい!すごい!」
「おまえはそれしか言えないのか・・・」
「だって、すごいかわいい!かたちもきれい!」


ボキャブラリーの貧困さが伺える。目の前ではしゃぐ少女の口から出てくるのは、"やばい"と"すごい"の連続。
いつになくキラキラと瞳を輝かせる久遠にそれを差し出せば、慌てながらそっと、形を崩さないように受け取った。


「なまえつけよう!なにがいいと思う?」
「なまえをつけたって、じきとけると思うが・・・」
「でも、せっかく作ったんだからさっ」


俺たち暁メンバーの中で、見た目と中身がこうも一致するのは久遠と飛段だけだな。
関係ないことを考えながら久遠の頭に手を置くと、不思議そうな顔をされた後に柔らかく目を細めた。・・・幾つかの問題発言や行動がなければ、素直に可愛いと思えるのに。
残念な美人とはこういうことを言うんだろう。


「雪うさぎでいいんじゃないか?」
「そのまんまじゃん!ネーミングセンスないイタチとか俺得だけど!」


俺がつくったそれをそっと雪の上において、勢い良く抱きつかれる。
体格差もあまりないため受け止めきれず、反動でひっくりかえりそうになるのをぐっと堪えてみたが、まあ倒れたってこの雪の上だ。痛くはないだろうな。
そう思って一緒に雪の上に倒れてみた。自然と、笑みがこぼれる。


「きゃーっ!あっはは!」
「こら、あばれるな」
「つめたいっ!きもちいい!」
「・・・聞いてないな」


ぽんぽん。上に乗られたまま頭を叩けば、久遠はそれはそれは嬉しそうに破顔した。
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