春うらら。
院内には、お遊戯室と呼ばれる部屋があり、その部屋についているガラス戸は直接庭に繋がっている。そこから注ぐ太陽の温かな光に目を細めながら、ぐでんと伸びる少女は言わずもがな久遠だ。
上着を羽織るべきか、それともTシャツ一枚で過ごすべきか、この季節はどうも調節がしにくい。けど久遠は後者のようで、寒さは太陽の光でカバーしている。
久遠の頭の近くに座れば、俺に気づいたこいつはにっと笑みを向けてきた。つられて笑いながら頭を撫でる。


「日差しがね」
「ああ」
「気持ちよくて日向ぼっこしてたの」
「雲も見当たらないし、文字通り快晴だな」
「うん!みんな元気にしてるかなあー」


転生して、五年が経った。
今年で俺は十歳、久遠は九歳。小額四年生と三年生になる。時の流れとは早いもので、・・・本当に早いもので、新品だったランドセルはもう随分とよれてしまっている。身の丈も大きくなって、あまり差がなかった身長も俺の方がぐんと伸びて大きくなった。


「長門も寝そべりなよ。きもちーよ」
「ああ」
「ふっふふー」


寝そべると、即座に顔を寄せてきた久遠の額を軽く人差し指で打って、同じように仰向けになって空を見上げた。
庭では、一部の子どもが楽しそうにはしゃいでいる。暖房がかかっていなくても、服と、太陽の光と、隣の体温で寒さなんて感じない。


「あー・・・眠い」
「寝るか?」
「夜に寝れなくなりそう!」
「ああ、まあ、その時は付き合ってやるから」
「長門が優しい!いっつもだけど!」


精一杯に腕を伸ばして抱きついてきた久遠。引き離すことはせずに好きにさせてやる。デイダラもいつも、嫌々言いながらもなんだかんだで好きにさせていたっけな。つんでれ、というのだろうか。
素直じゃないのはサソリもだったな。その分良い思いをしていたのはイタチが多かったように思う。


「今長門が何考えてるのか当ててあげる!」
「言ってみろ」
「今晩のメニューなにかな、とかでしょー!」
「俺は久遠じゃないぞ?」
「それどういう意味よっ」


そのままの意味だけど。
言いながら久遠の頭を撫でれば、気持ちよさそうに目を細めた。ぐんっと愛おしさが募って、頭を撫でていた手をそのまま目を覆うようにかぶせる。
「んー、おやすみ」柔らかい声に小さく頷けば、数分後、こいつはすうすうと寝息を立て始めた。


「おやすみ」


俺も、一眠りしようか。
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