目を開けたら、薄暗い世界が広がった。
ロウソクが一本灯された部屋の冷たい床に、あたしはうつ伏せで倒れていたようだ。
もう少しレディを労わらんかあのオカマめ。
堅いところにどれだけの間寝ていたのか分からないけど、あたしの骨はギシギシと音を鳴らす。
これが原因で腰痛がしばらくひかなかったらどうしてくれるんだ、サ○ンパスくらいは提供してくれないと困る。
そんなことを思いながら辺りを見渡す。
なんの面白みもない、ひんやりとした空気の部屋だった。
これならまだ暗いけど心地いい暁のアジトのリビングのほうがマシだ。


「・・・はあーあ、」


無意識にため息がこぼれる。
早くもみんなが恋しくなってきた。いかん、エネルギー不足だ。
あたしの原動力はサソリさんやイタチ兄さんやデイダラなのに。
イタチ兄さんなんか、もう3日くらい会ってない。そろそろ充電が切れるんだけど。

コンコン、と控えめなノック音がして、あたしはとっさに身構える。
開いたドアの隙間から見えた、眼鏡の男の人。


「カブト!!」


名前を呼ばれた男の人―――薬師カブトは若干眉をひそめた。
あ、やばいやってしまった。
初対面なのに名前知ってるなんておかしいよね。


「何故ボクの名前を・・・と言いたいところだけど、それは置いておこう」
「いいよそのままナチュラルにスルーしてください」


深々と頭を下げれば、大蛇丸様が呼んでるから急いでとその言葉事態ナチュラルにスルーされた。


「あ、今の言葉はスルーしてくれなくてもよかったのに」
「君になにをする権利もないよ。主導権はこっちにある」
「どこまでもスルー!?」
「早くしてくれないか、ボクが嫌味を言われるハメになる」


無理矢理手首を掴まれ、最後までスルーされたあたしはずるずると引きずられるようにして部屋を出た。



大きな部屋の入り口に立つ。
カブトは一度立ち止まって、あたしの手を掴んでいないほうの手でドアをノックする。
小さな返事が聞こえて、カブトは力強くあたしの手を引っ張った。


「いったー!!女の子になんてことすんの!!」


非難さえも華麗にスルーしたカブトは、そのまま大蛇丸の傍らへを移動する。
ちょっと、泣いていいかなあたし・・・。


「言ったはずだ。君に何をする権利も―――」
「いいわカブト。もともと拉致したのはこっちなんだから」
「お、少しくらい常識はあるみたいですね大蛇様」


おどけた口調で言ったらすぐさまカブトに睨まれた。
咄嗟になにかの後ろに隠れようにも、誰もいないしなにもない。
こんなときはいつも、飛段の後ろに隠れてたのに。


「あなた、おもしろいわね。見たところなんの能力もないみたいだけど、どうやってあの組織に入れたの?」
「空から降って来てそのまま入った」
「「は?」」


あたしが言ってることに嘘偽りはない!
ますます眉をひそめたカブトと、面白そうに口角を上げる大蛇丸を交互に見る。
そろそろあの人が現れてもいいんじゃないかな、この場所でのあたしの楽しみはそれしかないんだからさ、暁のみんなに会えないぶん早く―――、


「呼んだか」
「来たああああああああああああああああああああ!!!」


噂をすればなんとやら、聞き覚えのある声がしたほうに振り向く。
そこには若干目を見開いたあのイタチ兄さんの弟、サスケが佇んでいた。
やっべ興奮してよだれが・・・!


「・・・誰だこいつは」


サスケに睨まれる。ああ、イタチ兄さんそっくりでなんだかイタチ兄さんに蔑まれてるみたい・・・!本人じゃないのが惜しいけど!!

大蛇丸は静かに笑うと、暁にいた娘よと言った。
目の色が変わるサスケ。びゅ、と伸びてきた手から間一髪で避ける。
この子今胸倉掴もうとしてた!女の子の胸倉を!

目の色が黒から赤に変わる。
サスケくん、とカブトが少し焦ったように言った。
視界が一瞬揺れる。
次に映ったのは、驚いたように目を見開くサスケの表情だった。


「・・・幻術が、効かないだと」
「フフ・・・面白いでしょ?」
「寝てる間にいろいろ試してみたけど、この子には忍術も効かなかった」
「ちょっとそれ、今のさりげなく言ったけど問題発言だからカブトさんよ」


なんだ寝てる間にいろいろって!


「歳も近いし話相手くらいにはなるんじゃないの?サスケくん」
「話相手なんていらない・・・だが・・・暁ということはアイツの事も知っているのか」


アイツ。
サスケが指す人物は考えなくても分かった。
腰の刀に手を伸ばすサスケににっこりと笑いかける。あたしは争いごとは嫌いです!


「いいよ教える!その代わり、あたしの話相手になってくれたら、ね!」


情報を簡単に売るんだね、初めて笑みを見せたカブトはスルーだ。
サスケは一瞬逡巡して、あたしの目を見た。
あたしも力いっぱい見返す。お願いあたしの話相手になって。癒しがないよここには!

いいだろう、小さく呟いたサスケに勢いよく抱きつけば、やめろと肩を押された。


「一応人質だということは忘れないほうがいいと思うよ」
「そうねぇ・・・あなたは一応暁をおびき出すための餌なんだから」
「そんなに一応を強調しなくてもいいじゃないですか」


ねー、とサスケの頬をつつけば思い切り頭を叩かれた。
気安く触るなとのお言葉付きで。
やっぱりイタチ兄さんのが優しいから好きだもんっ!!

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