初任務だ。
部屋に響いた赤司の厳かな声に、がばっとベッドから起き上がる。初任務。かっこいい響きだけれど、その内容はきっと重い。
先日買った動きやすい服を着て部屋を出る。ひんやりとした廊下は、人気がなくて少し怖い。
ずんずん進んで奥の赤い扉の前で一度止まった。すう、はあ、深呼吸を三回。

"まぁくれぐれも死なんよーにな"

死んでたまるかっての。
にいまりと笑った今吉さんの顔をかき消すように首を激しく振って、扉に手をかけた。


「遅いのだよ」


久しぶりに見たなのだよもとい緑間は、なんというか相変わらずというか厳しい。まぁね。私これでも小心者だからね。ガラスのハートだからね。緊張だってするわボケ。
軽く睨めば、緑間は不機嫌そうに眼鏡のブリッジを押し上げた。

デスクに肘をついて微笑を浮かべていた赤司が、「おはよう」と軽い口調で言う。おはよう?おはようって言ったこいつ?そんな余裕な笑み浮かべちゃって?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはようございます」
「そのとてつもなく長い間が気になるところだが、さっそく君に任務を与える」
「氷室さんの手伝いですか」
「そうだと思うかい?」
「ごめんなさい」


一瞬で凍りついた空気に顔が引きつる。冗談通じないなマジで。きついぜ。
内心涙を流しながら赤司の瞳を見つめ返す。と、同時に部屋の扉が開く音がして思わず驚きで変な声が出そうになった。よく耐えた私。


「ちっすー」


・・・あ、この人知ってる。確か秀徳の―――


「遅いのだよ高尾」
「わりーわりー、ちっと渋滞に巻き込まれた」
「久しぶりだね、高尾」
「おー赤司、久しぶりー」


センターわけ、サラサラ、なんだっけ、ホークアイ、あとそれから・・・真ちゃん呼び。ぶっふぉ。
吹きそうになりながら、表情に出さないように努める。赤司と目があった。彼にだけは私の胸中が筒抜けな気がしてならない。


「今日の任務は秀徳のメンバーとともに行ってもらう」
「秀徳の」
「そうだ。テロを未然に防ぐというのにも、ここだけでは手の届かないこともある。それを補うために本部とは別にいくつかの場所に拠点を置いている。死なない限り彼らとも関わっていくことが増えるだろう、一応覚えておけ」
「死なない限り」
「そうだ」


手渡された白いメモに書いてあるのは、漫画でも出てきた強豪校の名前。
ほうほう、学校名がこっちでは拠点の名前になってるのか。


「秀徳、海常、桐皇、誠凛、陽泉、洛山・・・・・・・霧崎・・・・・」


まじか。あのラフプレーの奴らも関わってんのか。絶対ここと一緒に任務とかしたくねぇ。
どうかしたかい?と訝しげな顔をする赤司になんでもないですと告げて、緑間に向き直る。
とりあえずは今日、生きて帰ってくる。それだけだ。

重たい空気を裂くように、高尾が私の前に立ってからりと笑った。


「話は聞いてんよー、俺高尾和成な。よろしっく」
「楸久遠です。死にたくないです。よろしくお願いします」


差し出された手を思いっきり握れば、何故か爆笑された。


「ひいっ、なにこの子超おもろ、ぶっふぉ!あ、敬語いらな、っくく・・・!」


どうやらツボが浅いのはどこでも変わらないらしい。
ていうかどこに笑う要素があった。
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