いつの間にか心にいた
"大蛇丸がこのアジトの居場所を突き止めた可能性が出てきた"
リーダーからそう情報が入って来たのは、昨日の夜のことだった。
咄嗟に浮かんだあいつの顔。あの平和ボケした、笑顔だった。
赤砂のサソリともあろうこのオレが、ただの少女のことを気にかけるなんてらしくねぇにも程がある。
そう思ってひとり、部屋の中で咄嗟に頭を振った。
今日の任務はある地域の紛争の手伝いをすることだ。
敵が何十人、何百人いようとオレとデイダラだけで倒せる自信は、十分にある。
とりあえず一刻も早く終わらせて・・・、終わらせて?
終わらせて、オレは、早くアジトに帰ってなにすんだよ。
「旦那ァ!!」
「っ、」
目の前にクナイが迫っている。
顔面に直撃したが、ヒルコだから心配はない。やってくれたなクソが。
隣にデイダラが降り立った。
前を向きながら、しかしオレの様子を伺うようにして問いかけてくる。
「オイ旦那、らしくねぇじゃねぇか、うん」
「・・・うるせぇ」
飛んできたクナイを尾ではじき、毒針千本を繰り出して敵を殲滅する。
コイツはコイツで粘土を爆発させながら、オイラ、と呟いた。
「正直アイツの安否が気になる」
「・・・、久遠か」
「ああ」
昨日の夜のように、久遠の平和ボケした顔が浮かんで消えた。
そしていつか見た、あの悲しそうな顔も。
人に情をかけるのはこの上なく不愉快だが、気になるものは仕方ない。
アイツがいないアジトなんて帰る意味もなにもない。
アイツの声が聞こえるから、アイツ、久遠がいるから、オレ達はアジトに足を運ぶのだ。
アイツが来る前は、出入りもしてなかったアジトに。
・・・だからこそ、大蛇丸なんかに見つかったのだろうが。
「だから、早く終わらせてアジトに帰りてぇ。・・・うん」
「・・・フン。待たせるのは嫌いだからな」
言ってから気づく。
久遠がアジトで待ってるのが当たり前になりつつある日常。
それを心地よく思ってる自分。
そしてそれが壊されたとき、オレはありえないくらいに気が狂うかもしれないという予想、きっと事実。
それはデイダラも同じなのか、はたまたオレだけなのか。
少なからず、アイツが待ってるいつもの風景を、抱きしめられたあの感触を望んでいるのはきっと同じだ。
「デイダラ、」
「おう」
コンビ技で一気にキメてやる。