「パジャマの奴と一緒に歩くとか俺まで変な目で見られそうっスわ。最悪」


試着室で選んだ服に着替えてお会計を済ませた。にも関わらず、こいつ・・・まだパジャマネタ引っ張ってきやがる。あれか。好きな子ほどいじめたくなるってやつか。
口に出して言えば真面目に引いた目で見られたからもうこいつとは何も喋ってやんない。冗談に決まってんだろが。


「次下着買うからついてこなくていーよ」
「それでアンタが逃走でもしたら俺なにされるかわかんねーし」
「しないってば。デリカシーないとモテないよ」
「別にアンタの下着とか見ても勃たな「死ね」


腹に一発お見舞いして購入した服を全部押し付けて下着の店に入った。背後で恨めしげな声が聞こえたけど無視だ。あんなやつ知らん。
自分のサイズの場所から適当な柄を選んでレジに行こうとした時、「ちょっといい?」柔らかい女の人の声がして思わず肩を震わせる。
そろりそろりと振り返れば、あ、この人。


「あなたが久遠ちゃんかぁー!」
「えっと」
「桃井さつき。さつきって呼んでね!」
「さつきちゃん」
「っかわいいー!」
「うぐっ」


がばっと抱きつかれてばいんばいんのお胸が顔にあたって息ができない。ばたばたと手を上下に振れば、「あ、ごめんね?」とさつきちゃんはようやく解放してくれた。
見事なまでに美人だ。巨乳だ。美脚だ。欠点なさすぎだろ。女子やめたい。貧相な自分のそれを見てため息をつけば、「まだまだこれからだよ」と眩しいくらいの笑顔をいただいた。墓穴掘った・・・


「店の前にきーちゃんいたからもしかしてと思って」
「きーちゃん?」
「あ、黄瀬涼太のことね」
「きーちゃん・・・ぶふっ」


吹き出した瞬間寒気がしたから慌てて口元を手で抑えた。あいつ地獄耳かよ。
目の前のさつきちゃんは不思議そうな顔をしている。ああ美人だ・・・

ちゃっちゃとお会計を済ませてさつきちゃんと店を出ると、不機嫌そうな顔の黄瀬がしっかりと手に荷物を持ってくれていた。意外と律儀な奴だ。


「この後は何か予定あるの?きーちゃん」
「きーちゃん」
「アンタまじで殺すっスよ」


大きな手が私の頬を思い切り引っ張る。さつきちゃんが「ちょっと女の子になんてことするの!」と黄瀬の手を払いのけてくれた。のに、なんでそんな楽しそうな顔してるのさつきちゃん。
痛む頬を押さえながら、黄瀬に無理矢理持たせていた荷物を受け取ろうと手を伸ばす。すると若干驚いたように目を見開いた黄瀬がふいっとそっぽを向くものだからもうほんとなんなのか意味わからん。


「すぐ帰るっス。なんならそいつ桃っちに預けてもいい?なんか喋りたそうな顔してるし」
「さっすがきーちゃん」
「きーちゃん」
「決めた。殺す」


また大きな手が伸びてくる前に、さつきちゃんの手を取って走り出す。
あ、結局荷物持ってもらったままだ。
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