し、心臓が持たない。
遙先輩の気持ちを理解してからというもの、慣れたと思っていた彼のスキンシップに過剰に反応してしまうし、これじゃあ初めて会った時と変わらない。
それに、その場の空気でなにも返事とかしないで逃げてしまったけど、本当にこのままでいいのかあたしにはわからなかった。いや、いいわけないんだけどさ、でもさ、えええ。
一緒に帰った日、以前あたしがぽろっとこぼした好きなお菓子を覚えてくれていた遙先輩を思い出す。単純に嬉しかったし、・・・その、きゅんと、した。
でも、こういうのって"好き"っていうのかな。恋愛を経験してこなかったわけじゃない。今までも好きな人はいたし、お付き合いをさせてもらっていた人もいた。
けど、遙先輩ほどストレートで分かりにくい人は初めてだ(渚に言えば久遠ちゃんが鈍いだけだよって笑われたけど)。

枕に顔を埋めてベッドの上をごろごろ転がる。
遙先輩とのやり取りを思い出せば思い出すほど、あれはこういう意味だったのかとか、じゃああの行動はあたしを想ってとか、自意識過剰なことばっかり。
仕方ないじゃないか、なんにせよ好意を持ってもらっていることは嬉しい。・・・だからこそ、きちんとした返事をしたいし、・・・できることなら、悲しむ彼は見たくないし。


「っうぐうううううううう」
「ちょっと姉ちゃんうるさいんだけど。あとなんで俺の部屋のベッドで悶えてんの」
「春斗ぉ!」
「うおっ、なんだよキモいな」


キモいとな。辛辣な弟だ。
その質問の答えは暇だから。これに限る。春斗はというと、ゲームに夢中だ。そんなに面白いのかそのゲーム。
横から覗いてみるけれど、モンスターを倒していくだけのそれになんの面白さも感じない。男子ってみんなこういうのにハマるのかな。


「ねー、春斗」
「んー」
「春斗って好きな子いる?」
「ぶふっ!?っあー!ねーちゃんの馬鹿!変な質問すんなよ!」
「うわその反応、いるんだ。もしかして付き合ってんの?ねぇねぇ」
「絡み超うざいしぜってー教えねー」


我ながら酔っ払いのおじさんみたいな絡み方したなとは思ったけどそこまで言われる筋合いはないでしょうに。イラついたから電源ボタンを押してあげた。春斗は声にならない悲鳴を上げてあたしを睨んできた。ざまぁ。


「姉ちゃん一生許さねぇ」
「はいはい、で、好きな子いるの?付き合ってるの?ねぇねぇ」
「だからうざいって」
「紹介くらいしなさいよ」
「やだよこんな横暴な人に紹介とか」
「ん?」
「なんでもないですゴメンナサイ」


むににに、と頬を横に伸ばせば涙目になりながら謝ってきた。よろしい。弟はいつでも姉の僕であるべきだよ。
赤くなった頬をさすりながら、春斗はもう一度ゲームの電源をつけた。


「じゃあ逆に聞くけど姉ちゃんは好きな人いるの?」
「え、・・・なんでそう思ったの?」
「楽しそうだから」
「楽しそう?楽しそうに見える?」
「時々ニヤついたりしててキモいなーって」
「ん?」
「ゴメンナサイ」


浮かんでくるのは、遙先輩の綺麗な横顔。
あーあ、あたしもほんっとに単純だなぁ。
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