「一応確認しておこう。名は?」
「楸久遠です」
「なぜあんなところに?」
「夢遊病で」
「ふざけてんのかお前」
「大輝。・・・俺と真太郎の話をどこからどこまで聞いていた?」
「殺すのは心苦しいが、くらいからです」
「ほう」
「おい赤司、夢遊病とかまじで信じんのかよ」
「・・・信じるもなにも、見たところ発信機も盗聴器もカメラはおろか通信手段になるものを持っていないし、何より寝巻きだ」


まぁ朝から着替えてなかったしな。ニートと化していた私をなめんなよ。と、心の中でドヤ顔する。表に出ていたのか、「妙な真似をしたら殺すぞ」となのだよに睨まれた。怖い。
「真太郎」諭すようなオヤコロの口調に、彼は苦々しい表情を浮かべる。ざまぁー!また睨まれた。
そんなに顔に出てるかなぁ、私。
とりあえず、今このとき殺されないとわかったから少し心の余裕が出てきた。犯罪もなにも犯してないというのに手首にはめられた施錠をかちゃかちゃ鳴らしながら、なのだよが運転する(左ハンドルだった・・・)車の窓から外を眺める。
見た事のない場所。当たり前と言えば当たり前か。助手席に座るオヤコロは、バックミラーで私を観察しているようだ。一人分空けて隣に座ったガングロは、服に手を突っ込んだ状態だけれどすぐに動ける体勢なんだろう。逃げるつもりはないし逃げれるわけもないけど、隙がない。
一体なんの仕事してんだこの人達。

き、と音を立てて車が止まる。目の前に立っているのは、どこにでもありそうなバーだった。・・・バー店員が銃を保持してるって、どんな国だよ。

■■□■

バーに見せかけた店の中は綺麗に改造されてあるようだった。ボタンがいろんなところにあって、認証システムもたくさん設置されていて、まぁ一言で表すならおっきな組織のアジトって感じだ。オヤコロがアジトに連れて行くって言ってたことも頷ける。これはアジトだわ。
バー店員とか抜かしてた数分前の自分が馬鹿みたいに思えるくらいだ。
途中操作を誤ったガングロのせいで仕掛けられた武器が私に牙をむいた。死ぬかと思った。ガングロぜってー許さねぇ。


「アララー?赤ちん、なにその子?」


間延びした声。おいこんなでかいのになんで気配ないんだよどっから出てきたんだよ、まじで巨人じゃん。開いた口がふさがらないってまさにこのことだよ。
ぽかーんと口を開けたまま巨人を見上げていると、「間抜け面ー。まさか新しい仲間とかじゃないよね?」おいこら間抜け面って。
おめーも大概じゃねーか、ぼーっとしたお顔のくせに!


「ああ、色々あってね」
「・・・ふーん」


呟いたきり、興味が失せたのかのそのそとどこかに行ってしまった。なんだっけあの人、すんげー長い苗字だった気がするけど・・・忘れた。
たぶん紫って感じが入ってた気がするけど。


「むらさきはな・・・ふとし?」
「ぶふっ」


ガングロが吹いたことによって頭ひとつ分以上背の低い私の頭につばがかかったけど、ここでキレたら逆に殺されそうだったので何も言わないでおいた。
それにしてもちっさく呟いたつもりなのになんで聞こえてんだこの人。
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