文化祭二日目。
あたしたち一年五組の売り上げは、そこそこってところだった。サソリさんがウェイターとして働けば絶対学年一位どころか全校でも上位をねらえると思ったんだけどなぁ!なんて下心丸出しの期待をこめた目でサソリさんを見つめても、キモいと一喝されるだけだった。ひどいけど好き!
いーもんね、裏方で手際よく作業するサソリさんもそれはそれでかっこいいから!


「今日もがんばりましょうねサソリさん!汗水流して!」
「お前のその言葉に他意を感じるのはオレだけか」
「エっ?」


舌を出して拳を前に・・・する前に、サソリさんの手が伸びてきてあたしの頭を引っぱたいた。
叩かれたところを大事にさすりながら、自分の持ち場につく。昨日と同じようにこれでもかっていうくらい元気な声で放送がかかって、文化祭二日目が幕を上げた。

***

「コーヒー砂糖とミルク入りを四人分!」
「ホットケーキ二人分も追加ね!」
「オレンジジュースある!?」


ちょちょちょ、どうしたどうした、昨日の倍忙しくない!?
ホットケーキ担当のあたしはせわしなく粉を混ぜたりフライパンに液をたらしながら表のほうを覗く。うわ、すごい、昨日よりもお客さんいっぱいいる。
なめてた二日目!これじゃ冗談じゃなく汗水だらだらだ!そんなサソリさんを見たい!
頬をつたってきた汗を拭いながら期待に胸を躍らせてサソリさんを振り返る。


「なんで涼しい顔してるんですか!?」
「は?」
「こんな忙しいのに汗ひとつかいてないサソリさんもまたかっこいいけど!!」
「・・・しゃべってねーで作業しろ変態」


まあ案の定というか、想像はしてたけどサソリさんは全然余裕そうな顔でコーヒーを作っていた。かっこいいけどなんか悔しい!!!午後の自由時間はいっぱい振り回して汗だらだらにしてやる!そいでもっていきおいよく抱きつく!サソリさんなら汗すら良い匂いしそうだし!じゅるっ・・・


「てめーにはもう何度も振り回されてんだよ」
「あれっ?」
「ありきたりな突っ込みしとくけど口に出してたぞお前」
「ですよねー!このネタ飽きましたよね!」
「ああ」
「きっぱりだ!そんなサソリさんも麗しい!」
「もうお前なんでも褒めときゃいーって思ってんだろ」


呆れた風にため息をつくサソリさんの言葉が図星で口ごもる。だってほんとにサソリさんいつでも麗しいしー、なんて唇を尖らせれば「そーかよ」と可愛らしいお言葉が返ってきた。萌え提供ありがとうございますごちそうさまです。

にんまり笑ってホットケーキに向き直る。すると、近くで花ちゃんが困ったような声を上げた。


「粉なくなっちゃった・・・」
「え、それは大変だ!あたし買い足し行ってこようか?」
「うーん・・・久遠ちゃん手際いいからここ抜けられると誰が代わりになるかって話なんだよね」
「花ちゃんはダメなの?」
「私は全体の指揮しなきゃだし」
「じゃあサソリさんだ。サソリさんならコーヒーもホットケーキも同時進行で作れるから」
「なにそれ凄い。サソリ君ってロボットなの?」
「いやあたしの旦那!」
「くだらねー会話してねーで行くならとっとと行けこのカス」
「愛の鞭が痛い!!お願いしますサソリさん!」


しっしと手で払うそぶりを見せながら、サソリさんはさっきまであたしが持っていた道具を手に手際よくホットケーキを作っていく。そのあまりにもなかっこよさにずっと眺めていたい衝動に駆られたけど、「じゃあ久遠ちゃんお願いね!」と満面の花ちゃんに我に返ってエプロンを外した。


「サソリさんあたしが居ない間寂しくて震えないでくださいねー!!」
「死ね」


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