それが日常になっていく
「ッゼツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
最近暁の仲間入りしたあの変態の声が、アジト内に響き渡った。
何事かと思って部屋を出ると、サソリの旦那も部屋から顔を覗かせていた。
またなにやってんだあいつ、と呟く旦那に首をかしげる。
ゼツ、とか聞こえたけど。
「はぁ・・・ったく、」
至極めんどくさそうに、旦那が首を鳴らす。
どこに行くんだと聞けば、あいつのとこに決まってんだろと眠そうな目がしかめられた。
あいつのとこに決まってる、だと。
旦那の野郎、久遠に感化されすぎじゃねぇの、うん。
自覚してるのかしてないのか、旦那はオイラに背を向けて歩き出す。
気になって仕方ないのか、その足はいつもの歩調よりも少し速めだ。
「ッハ、あの赤砂のサソリが・・・うん、」
ふいに久遠の顔が浮かんだ。
部屋に戻ろうとしていた足を止め、声が聞こえたほうに方向回転する。
・・・オイラも旦那の事は言えねぇってわけか。笑えねぇ。
***
「・・・で、なにやってんだよお前ら・・・」
「だっ、サソリさん!!ゼツが、ゼツが!!お風呂覗いてきたんですぅ!!」
「だから悪かったって〜」「オレハ止メロト言ッタンダ!」
盛大に顔をしかめる旦那と、その後ろに隠れるシャツとパンツ姿の久遠。
そして旦那の足元で緩く笑う白ゼツと表情の読めない黒ゼツ。
・・・大体状況は読めた。
「ゼツの変態痴漢おたんこなすーーー!!」
「そこまで言わなくてもいーじゃん」「心外ダ。覗イタノハコイツダケダ」
「お前らふたつでひとつじゃねぇか」
なんていうか、うん・・・
暁のアジト内でこんなことがあっていいものか・・・
とりあえずシュールだ。
「あ、」
ふいに久遠がオイラを見た。
視線がかち合って、すぐに逸らす。
まだ風呂から上がったばかりなのか、こいつの体から出る湯気は少し・・・色気があった。
「デイダラちゃん心配で来てくれたのそうなのありがとう!!」
「だっ、誰もんなこと言ってねぇだろーが、うん!」
「ツンデレですね分かります。あたしツンデレをデレさすの得意だから安心して!」
「触んな来るな近寄るな!!」
抱きついてきた久遠を引き剥がしたのは、意外にも旦那だった。
えーサソリさんあたしもうちょっとデイダラを堪能したいんですーとふて腐れる久遠に服を投げつけ、若造はすぐのことで欲情しちまうんだよとあらぬことを吹き込んだ。
「え、あ、ごめんねデイダラ、ちゃんと順を追ってから・・・」
「マジで黙れ!うん!」
こいつに感化されつつあるとか、絶対に嘘だ。