背中が語る物語
着替えを持って廊下を歩いていると、ちょうど部屋から出てきたイタチ兄さんに出くわした。
今日もその射抜くような視線がまぶしいです兄さん・・・!
でも今日は特別視線が痛いような気がする。
「・・・お前、なんでそんなすすだらけなんだ・・・?」
「デイダラちゃんが喝してきたんです」
けほっ、と咳払いをすれば、黒の煙が口から出た。
うん、苦い。
「それより今日も男前ですね兄さん!あたし日に日に兄さんに惚れ直しますよもう!」
兄さん万歳!!
両手を高く上げたら着替えが真っ黒なあたしの顔に落ちてきた。
あ、服が汚れちゃう!
ついでにすすが目の中に入って来た痛たたた。
「・・・お前はバカか」
そう言いながら服を持ち上げ、あたしの顔のすすを払う兄さん。
お風呂行こうと思ってたけど止めようかな。
洗うのもったいない気しかしてこなくなった。
それにしても目が、目が・・・!
乱暴にこすれば、ばい菌が入るから止めろと手を止められた。
「イタチ兄さん洗えない場所が増えてくから止めてください!」
「・・・」
あ、無言で後ずさらないでください嘘ですごめんなさい。
「・・・ほどほどにしておけ」
いつかのサソリさんの言葉を反復し、イタチ兄さんは廊下を歩いていく。
ひとつひとつの言動行動が様になるからさっきから心臓が暴れまくりだ。
まったく人の気も知らないでさ!
罪な男だね!
「・・・」
その背中が見えなくなるまで、ずっと見つめる。
悲しみに満ちた背中だった。