少し荒くドアをノックする音が室内に響いた。
眠い目をこすって時計を見れば、まだ二時。・・・誰だよ、こんな時間に訪れる常識のない奴は。
と思いつつも、大方ドアの向こうにいる人物はわかってる。
前髪をかき上げながらドアを開ければ、口元を引き結んだ久遠が眉根を寄せて立っていた。


「おい、今何時だと思ってん・・・!?」


・・・は?

いきなり腰に巻きついてきた久遠に驚きが隠せず、あぁ今俺絶対ェ間抜けな顔してんだろうなとどこか冷静な頭で思った。
なんだこれ。嫌じゃないしむしろ嬉しい、けど・・・なんだこれ。
普段の久遠は絶対にこんなことはしない。絶対にだ。ハルや真琴に甘えることもしないこいつが、ましてや俺に甘えるなんて。


「久遠?」
「・・・・・・・・・・・」
「黙ってちゃわかんねーだろ。おら」


無理矢理頬を掴んで上を向かせる。その目尻には涙が溜まっていて、俺は再度驚いた。・・・ったく、なんなんだ。
どうせ、悪い夢でも見たとかそんなんなんだろうけど。
なるべく優しくそれを拭ってやると、久遠は首を振ってまた俺の服に顔を押し当てる。


「・・・凛が死ぬ夢みた」
「ハッ、そりゃまた物騒な夢だな」
「・・・・・・・・・・・・・怖かった」
「今目の前に俺がいるだろ。それに言葉に出して言った事は正夢になんねぇ」
「、凛」
「なんだよ」


返事はなかった。その代わり、俺の腰に回る腕の力が強くなる。
宙ぶらりんだった手を頭の上に乗せて、もう片方の手を腰にまわして抱き寄せれば、久遠は安心したように息を吐いた。


「・・・落ち着いたか」
「・・・・・うん」
「もう寝れるか?」
「たぶん」
「・・・・・・・」


一瞬不安げに揺れた瞳にため息をつく。
額に手を伸ばして、前髪を上げてそこにそっと唇を寄せた。


「っ!?り、え、・・・・!」
「目に見えて取り乱すんじゃねーよ、俺が恥ずかしいだろ!」
「凛がやったんじゃん・・・!」
「うるせー寝ろ、今すぐ寝ろ、自分の部屋戻って寝ろ」
「言われなくても戻るもん!」


ばっと体を離して自室に向かった久遠の耳は赤かった。
かくいう俺の顔も熱い。・・・あー、慣れないことはするもんじゃねぇな。

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