笑う角には喝来たる
「ごめんなさいごめんなさいぶふっ!!」
「ゲハハハハァ!!」
「てめぇらなぁ・・・!」
まげの真ん中にブッ刺さった手裏剣を指差しながら、隣にいる飛段は大口を開けて笑っている。
口端をヒクつかせて拳を振るわせるデイダラは、羞恥のあまり顔が真っ赤になっていた。
元凶はあたしだから笑えないしさっきからめっちゃ謝りまくってるんだけど、そろそろ限界だ。
止まらない笑いにそろそろお腹が痛くなってきたはははっははは!!
「・・・喝!!」
「ぎゃああああ!?」
時は数十分前に遡る。
***
「手裏剣だぁ?危ねぇ危ねぇやめとけって」
「そこをなんとか飛段さま!!」
手裏剣を手渡すのを渋る飛段にすがり付く。
飛段はすっかりあたしのお兄ちゃん気分なのか、手裏剣を投げたいと言ったあたしの申し出に盛大に顔をしかめたのだ。
だって忍者といえば手裏剣でしょ、あたしはこっちの世界のことをもっと体験したい!
まぁ飛段は大鎌が武器でほとんど手裏剣なんて使わないんだろうけどさ。
そんな飛段の背中に、今日は大鎌は見当たらない。
怖がるって配慮してくれたのだろうか。
「ね、ちょこーっとあそこに向かって投げてみるだけだからさ!」
「・・・じゃあ一番小さいやつだぜ?間違っても自分に投げんなよ?」
「投げるかよ逆にどうやって自分に投げるのさ」
どこから取り出したのかいつの間にか片手にあった小さな手裏剣を受け取る。
意外と重くてびっくりした。
「どう?似合う?」
くるくると回って手裏剣を目元に持って行きウィンクをすれば、慌てた顔で飛段は目元から手裏剣を離すように言った。
・・・飛段が過保護になりつつある・・・。
「似合うもなんもねぇだろうがよぉ。しかもウィンク顔いびつだしよ」
「いびつとか仮にも女の子に向かって言う!?」
確かにウィンクは苦手だけどさていうかできないけども。
ふてくされるあたしの頭を数回叩き、飛段は早く投げろよ見てて危なっかしいんだよと木の幹を指差した。
「じゃあ投げまーす、」
えい!
「・・・うん?」
「え?」
「・・・ぶふっ!!!」
なんとあたしの手から離れた手裏剣は緩やかな弧を描き、ちょうど任務帰りで通りかかったデイダラのまげに見事突き刺さったのだ。
そして冒頭に戻る。
***
「お前、絶対ぇ誠意こめてねぇだろうが!!うん!!」
「こめてましゅぶははははははっはははは!!」
「ゲッハハハハハハハハハハハハハハハァ!!!」
「わははははははははははははははげほっ!」
「ゲハハハハハハハハハハぶほぇっ!?」
黒こげになりながらも飛段とふたりして笑い転げる。
笑いすぎてむせた。
涙目でデイダラを見れば、今まさに粘土のぎっしりつまったポーチに手を伸ばしている。
ちょ、待てい!
「さすがに次喝くらったら死にます」
「おお、実に喜ばしいことだな、うん」
「ちょ、おま、待て待て粘土食わせんなああああ!」
おい飛段いつまで笑ってんだよコラ、さっきあんなにあたしに対して過保護だったんだからちゃんと守れよおいっ、
「ちょ、おま、」
「さて久遠なにがいい?C1か?C2か?・・・まぁそんなヘボいので終わらす気はねぇがな、うん」
「ちょ、おま、」
「・・・芸術は爆発だ!」
「ちょ、おま、」
「喝!!!!!」
ちょ、おまあああああああああああああああああああああああ!!