鍋パーティーなるものをすることになった。発案者は赤司だ。こんなに行事が好きな奴だとは思っていなかったから、誘われた時は心底驚いた。が、いつかも久遠がスキーが楽しかったとかなんとか言っていたから納得はした。赤司は意外と行事好き、と頭の中にインプットする。
隣を歩く久遠が、「楽しみだね」と笑った。あいつらと関わるようになってから、こいつも散々振り回されてはいるが楽しそうだ。


「闇鍋になんなきゃいいけどな」
「なりそうだったら造ちゃんしか止められる人、いないからね」
「・・・そのためのオレかよ」
「征くんのことだからそこまで考えてそう」


ぷぷ、と吹き出した久遠につられて笑う。
別に一緒に居て気まずい仲じゃねーしむしろ部活の後輩たちだ。みんなこいつのことを気に入ってんのは確認済みというか、合宿のときとかでも見ててわかったから誰に落ちるのか見物だな。と、一人考えた。
なんとなく、寂しい気もするけどな。

***

「やっほー久遠ちゃん!・・・と、虹村先輩・・・え、あれ?先輩?誘ってたんスか?」
「黄瀬てめー先輩への挨拶がなってねーぞコラ」
「いっ・・・!いて!痛いっス!」
「ちょっと造ちゃん、りょた君は仮にもモデルなんだからやめてあげなよ」
「仮にもじゃなくて本物!」
「吠えるな黄瀬。いらっしゃい久遠、虹村さんも」
「おー、邪魔するぜ。相変わらずでけー家だな赤司」
「えっ!?ここ家なの!?どっかの旅館かと思ってた・・・」
「馬鹿かオメー」


黄瀬の首を腕で絞めながら、靴をそろえる。
突然に居住まいを正し始めた久遠は、そわそわと辺りを見渡していた。どうせ執事やメイドがいねーのか探してんだろうな。そしてその予想は的中する。


「執事とか・・・」
「ああ、今日はみんなが来るから自分の部屋に待機させてるよ」
「へ、へー・・・!」


目を輝かせる久遠の頭を叩いて、赤司の後をついていく。
腕の中で黄瀬が苦しそうにもがいていた。

***

「よー久遠、・・・っ虹村先輩!?」
「えー?アララ?ほんとだ、虹村せんぱい」
「こんにちはなのだよ」
「それ敬語じゃなくね、珍太郎」
「真太郎なのだよ!」


おーおー賑やけぇな。
だだっ広い応接間のテーブルに、これまたデカイ鍋が用意してある。
次々と野菜を投入している黒子の隣を陣取っている桃井も、相変わらずというかなんというか。・・・抜かりねぇなー。
「先輩・・・そろそろマジで死にそうっス・・・!」苦しそうな黄瀬をしぶしぶ解放してやり、空いた席に座る。隣に久遠も座って、準備完了だ。


「久遠さん、虹村先輩と一緒に来たんですか?」
「うん、私も来るの知らなかったから玄関に造ちゃんいた時はびっくりした」
「オレだけじゃ何かあったとき対処しきれるかどうかわからなかったからね」


オレの隣に座った赤司からぽん酢を受け取る。
青峰と紫原は、早くも肉取り合戦を始めていた。汁が眼鏡に飛んできた緑間は不機嫌そうだ。


「お、塩鍋か」
「はい。お口に合わなければ用意はさせますよ」
「いや、大好物」
「私も塩鍋好き!」
「そう、よかった」
「久遠さん、先輩、取りますよ。なにが欲しいですか?」
「じゃあ私がテツ君の取ってあげるね!何がいい?」
「「鶏肉で」」


見事にハモったオレと久遠。顔を見合わせて笑えば、隣で赤司もくすりと笑った。
思えばこいつとは何かと好き嫌いが同じだったように思う。
にんじんも食えよ、とわざと嫌いなものを言ってやれば、造ちゃんもねといたずらに笑う。


「前も聞いた気がするっスけど、二人の間で恋愛がどうとかってなかったんスか?」


黄瀬の質問に、部屋が一気に静かになった。
・・・なんだこの空気。睨むようないくつかの視線が鬱陶しい。なに勘違いしてんだ、特にそこの青と緑と水色。

隣の久遠はいきなりのこの空気に、しかし戸惑うことなく「ないない」と笑い飛ばした。


「造ちゃんは家族みたいなもんだよー、青峰氏と桃井さんみたいな感じ?」
「さつきは巨乳だけど家族じゃねーっふご!」
「大ちゃんさいってー!!」
「青峰氏さいってー」


デリカシーのない青峰は桃井の拳によって沈没した。


「でも、バスケ部は結構有名じゃん!だから虹村先輩とよく絡んでると勘違いしたクズみてーな女子に僻まれたりしなかったんスか?」
「クズってりょた君・・・別にそういうのはなかったけど・・・」
「久遠ちんって憎めないタイプだもんね〜」
「まぁ・・・それは分かる気もするのだよ」
「まじで?」


嬉しそうに微笑んだ久遠。つい癖で頭を叩けば、「痛いなぁー」とまた笑った。

美人というわけでも、特別可愛いというわけでもない。けど、何か絡みたくなる、そんな雰囲気をこいつは昔から持っていた。平凡を形で表したような奴の、少し特別なところ。


「ま、そんな話は置いといて食べようよ!子テツ取ってくれてありがとー」
「いえ」


わいわい、また賑やかくなった室内。
こいつの影響力ってすげーなあ、なんて思いながら鶏肉を貪る。

まぁ、なんだ。アレだ。
仲良くしてるこいつら見てると、オレもほっこりするというか安心するというか。


「・・・赤司」
「? はい」
「お前ら、こいつのことよろしく頼むぜ」
「・・・!まるで結婚前の父親みたいですね」
「あーもーそれでもいいよ」

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