「・・・んー・・・?」


足元に転がる久遠"だった"それに、デイダラはデジャヴを感じるとともにくらりと倒れそうになった。言わずもがな眩暈である。
次いで、叫ぶ。


「旦那ァ!!」
「・・・るっせーな、今回はわざとだよ」
「余計タチ悪ィよ!うん!!」
「いつもあんな変態相手にしてっと気がもたねぇんだよ。ならまだチビのほうがマシだ」
「副作用とかねぇのかよ・・・」
「知らねー。久遠なら大丈夫だろ」


根拠のない自信を惜しげもなく前面に出すサソリだが、そんな彼の言い分ももっともで納得できるところがあるデイダラはぐっと押し黙った。
リビングに座るサソリと、その足元で楽しそうに転がる久遠(ミニ)。そしてそれを見下げるデイダラ。ここはれっきとした"暁"というS級犯罪者のアジトである。決して託児所ではない。

デイダラは以前よりは冷静な頭で向かいのソファーに座り込んだ。
と、同時にリビングの戸が開く。丁度、サソリが久遠を抱き上げたときだった。
顔を覗かせたイタチが息を呑む。ぱっちりと開かれた久遠の瞳と、バチコンと音が鳴るほどに目が合い、イタチは無言で戸を閉めサソリの隣に移動した。


「サソリ、また飲ませたのか。貸せ」
「てめーはロリコンか」


半ばひったくるようにしてサソリの手から久遠を奪ったイタチは、微笑みを浮かべる。


「いたち?」
「! 覚えているのか?」
「うん!かっこいい!」


邪気のない笑みに、イタチは心が癒されるのを感じた。
そのまま膝の上に乗せ、頭を撫でる。サスケの面倒を見ていた分、暁の中では世話が上手なほうなのだろう。
その様子を見て、面白くないのはデイダラである。
隣で手を伸ばしイタチと同じように久遠の頭を撫でるサソリを睨みながら、動きたいがプライドが邪魔をするデイダラは口を引き結んだ。


「どうしたデイダラ」
「っ・・・はぁ?何がだよ、うん」
「不満そうな顔してるぜ?ックク・・・」
「んな顔してねーし・・・」
「抱きたいなら抱きたいと言え」


イタチに口を挟まれ、沸点の低いデイダラは怒鳴りそうになったが、ふいに手渡された久遠を前に押し黙る。イタチに情け(?)かけられるなんて屈辱であったが、そんな気持ちも不思議そうに首を傾げる久遠を見て消えていった。


「でいたん」
「オイラのことも覚えてたのか?」
「うん!みんなおぼえてるよ」
「・・・そうか。すごいな、久遠は。・・・うん」
「なんかね、わかんないけどね、おぼえてるよ!すごい?」
「ああ」
「わーい!さそたん久遠ほめられたよ!」
「よかったな」


微笑ましげに頬杖をつくイタチも、目を細める。

久遠はデイダラの膝の上で、満足げな笑みを浮かべた。
犯罪者の巣窟で起こった、ある昼下がりの出来事。

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