「緑間、進路は?」
「もう決まっているのだよ」
「え。まじかはやっ!秀徳だろ?スポーツ推薦かぁいいなぁ、あたしも何か特技があればな」
「確かにスポーツ推薦だが、俺は勉強も力を抜いたことはない」
「わかってるわかってる。あー、どうしようなぁ」


唇と鼻の間にシャーペンを乗せうまくバランスを保ちながら、楸は頭の後ろで腕をくんだ。
その様子は周りにいる女子とはまた違う、こいつ独特の・・・言うなれば男勝りな雰囲気が漂っている。ゆえに、こいつの性格もあってか男女ともから人気者である。
変人と言われる俺とこいつがここまで話すようになったのは、ただ単に席が隣になったからだ。
その前からも何かと絡んでくる奴ではあったが。

第一印象は、うるさい奴。
だが隣になって色々喋っていると(向こうが一方的にだが)、男女ともに人気なわけも・・・まぁ、わかる。
とにかくいつでも屈託なく笑う楸を見ると、何故か安心するのだ。


「・・・そう焦ることはない」
「でもあたしそんな頭いくないからさー・・・やっぱ秀徳は無理かな」
「、秀徳を希望していたのか?」


驚いて楸を見ると、こいつはいたずらな笑みを浮かべて頷いた。


「緑間に内緒にして、秀徳で会ったとき驚かすつもりだったんだ」
「秀徳も帝光に負けず劣らずの生徒数なのだよ」
「関係なくない?」


緑間くらい分かりやすい髪色した奴なんていないっしょ。

そう言って、楸はまた笑った。
白紙の進路に関する紙には、少ししわがあった。こいつなりに、表面上ヘラヘラしているが悩みに悩んでいるのだろう。

隣の席になってから知った。
いつも授業中うるさい奴だと思っていたが、喋りながらも授業はちゃんと受けていたし、先生ともうまく接することができる。

・・・そんな楸を、応援してやりたいと思う。


「・・・本気で秀徳に入りたいのなら、」
「お?」
「勉強を教えてやらんこともないのだよ」


メガネのブリッジを押し上げながら、極力声を落ち着かせて言う。
しばらくの沈黙の後、楸は自信なさげに笑う。

あたしにできるかな?

そんな表情は似合わない。
思わず手を伸ばして頬をつまめば、目を見開いた楸は「あにふんだよ」と若干赤くなった。


「俺が教えてやると言っているのにそんな顔をするな」
「そんな顔って・・・」
「不細工なのだよ」
「失礼だな!元からだわ!」


それに、俺も。
お前と同じ高校なら、いいと思ってしまったから。


「・・・秀徳に入りたいのだろう」
「・・・おう」
「今からでも遅くないのだよ。俺の申し出を断るな」
「緑間ってこんな俺様だったっけ・・・」
「知らん。お前に対して遠慮してないだけなのだよ」
「喜んでいいのかわからんわ」


ぱしん、軽く肩を叩かれる。
その顔は先程よりも晴れ晴れとしていて、俺まで喜ばしい気持ちになった。

・・・これが友情なのか愛情なのか、自分でもよくわからない。
だが、


「緑間と同じ高校に行けたら楽しいだろうなー」
「・・・ああ」


とても心地よい。

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