リヴァイの愛は、とても分かりづらいと思うのだ。
いつの間にか一緒に居るようになって、どれくらいの時が経ったのだろうか。長かった気もするし、短かった気もする。なにしろリヴァイは人類の希望。私に割く時間なんて、あまりとれないから。


「じゃあなんで二人は一緒にいるのさ?」


向かい側で私の話を聞いていたハンジは、巨人を調べる時と同じようなキラキラした興味深そうな瞳で身を乗り出してきた。
廊下をリヴァイと二人で歩いているとき、強制連行されたのだ。まったく、ついてないな。よりにもよってハンジにつかまるなんて。
その時のリヴァイの台詞はこうだ。

"くだらねーこと喋るんじゃねぇぞ"

リヴァイさん、女は誰でもぺちゃくちゃ喋る生き物だと思っている模様。
それはともかく、


「なんでって言われてもな・・・」
「あのリヴァイが心を許して傍に女を置くなんて、未だに不思議でたまらないよ」


肩をすくめながら、それでもハンジは微笑ましげに目を細めた。
・・・これだから、どれだけうざくても私はハンジを憎めないのだ。それはリヴァイも同じことだと思う。


「リヴァイはどうか知らないけど、少なくとも私はあの人の傍にいるのが当たり前というか」
「ふんふん」
「愛情表現は苦手そうっていうか・・・そんなこと考えたこともなさそうだけど、一緒にいると心地いい?し・・・」
「ふんふん」
「・・・・・・・内緒ね?これ」
「え!?なになに!?」


辺りを見渡して、リヴァイがいないことを確認する。
興奮しているハンジに近づくのは少し抵抗があるけど誰かに聞かれるのもまずいので、耳元に口を寄せた。


「・・・・・たまーーーーっ・・・にね。何も言わずに抱きしめられることがあるんだけど」
「ふええええええええええええ!!!まじか!まじか!!きゃっはー!!」
「うるさいから!」


あのリヴァイが、と興奮を隠し切れない(むしろ前面に出しまくってる)ハンジの口を押さえ込みながら、思う。
そんなあの人にいとおしさを感じてしまうんだよなぁ。

やっと静かになったハンジにため息をついてココアを飲もうとコップの取っ手を掴む。
すると、誰かの冷たい手が私の両頬を包み込んだ。なんとなく、考えなくても分かる。この冷たくて硬い手は、


「んむ、りばい」
「余計なことこいつに吹き込んでねぇだろうな。先程巨人の叫び声みてぇな気持ちの悪い声が響いてきたが」
「来たリヴァイ!今クオンと君の愛は伝わりにくいって話をしてたとこだよ」
「あ?」
「はんじ!」


仕事上ではすごく信頼してるけど、こういう面での彼女の口は驚くほど軽い。髪の毛よりも軽い。それを知ってて話してしまう私も私だけれど。
リヴァイの手から逃れてハンジの口を押さえようともがくけれど、さすが人類最強。
そう簡単に解放されるわけもなく、逆に顔を上に向かされて鋭く細められた彼の目と視線が混じった。・・・?あれ、そんなに怒ってない・・・、?

って、リヴァイの顔段々近づいて・・・?

「っんむ」
「マジか」


一瞬塞がれて離れていった唇。
ハンジがいることも気にせずにキスしてきたリヴァイを呆然と見つめる。
彼はいつもどおり無表情のまま。サラサラの髪の毛が額に当たって少しくすぐったかった。


「・・・これでどうだ?」
「ど、どうだって・・・しかもハンジばっちり見てたよ・・・」
「見せたんだから当然だ。それより俺の思いはしかと受け取ったか聞いてんだ」
「・・・そりゃあもう」


嬉しくなって微笑めば、見てらんねー!と半ば叫びながらハンジは部屋を出て行った。

あいしてるをつたえるための両手
ことばがなくても
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