久しぶり、何ヶ月ぶりか忘れたが、気の向くままにリビングに足を運べば、なにやら嬉しげに冷蔵庫をあさる久遠を見つけた。

・・・なにやってんだあいつは。


「・・・おい」


気配を殺して後ろから声をかければ、少しだけ肩を上下させて久遠は振り向いた。
大きな瞳をこれでもたというくらいに嬉しそうに細めて、サソリさん!と笑う。
いつ見てもこいつは平和ボケした顔をしている。
まぁ悪い気はしない。


「サソリさんがリビングに来るなんて珍しいですね!明日の天気予報は槍ですかね?」
「おいそれはどういう意味だ」


手元の毒針をチラつかせればこいつはすぐに笑いながら冗談ですと手をぶんぶん振った。
口元が引きつっている。

それにしても。
久遠の腕に抱かれたウインナーやら卵やらを見る。
こいつこれからピクニックにでも行くのか?
こんな真夜中に?


「なにやってんだお前」
「明日の準備でーす!」
「は?」


至極嬉しそうに笑う久遠に大量の疑問がわいた。

明日?
どっか行くのか?
何故?なんのために?
ていうか外出を許すとでも思ってんのか?


「やだなぁもうサソリさんってば、心配しなくてもあたしはサソリさんのですよっていだだだだ嘘ですほっぺつねらないでだだだだ!!!」
「この口二度ときけなくしてやろうか?」
「嫌ですあたしの惚気聞いてもらえなくなっちゃう!」


赤みが残ったほっぺをさすりながら、こいつは始終笑顔だ。


「外出は許さねぇ」
「ヤンデレですか?それもまた萌えますねってだだだだだだだだだ!!!」
「マジで毒針刺していいか?」
「ほへんなはい、ふいまへん!!!」


両頬に大きな花が咲いた。
こいつの顔がマヌケすぎてつい笑いそうになる。


「情報が洩れたら困るからな。お前はアジト内だけに居るってリーダーとの約束だ」
「心配しなくても飛段と一緒ですから!!」


聞き取った名前に思わず眉をしかめてしまった。
・・・飛段だと?
こいつらいつの間に仲良くなりやがったんだ?


「飛段ってあの、飛段か?」
「飛段ってふたりいるんですか?」
「黙れお前」
「えへ☆」


頭を叩けば、久遠はまた嬉しそうに笑った。


「準備終わったらサソリさんに報告しに行こうと思ってたんです!・・・ついでに夜這いとかも考えてたけど」


聞き捨てならないなにかが聞こえたきがしたが、あえてスルーしておく。


「・・・なんでオレに」
「だって暁にいられるのは、サソリさんのおかげですから!」


なんとも言えない気持ちが込み上げた。
どうやらこの平和ボケに、感化されつつあるらしい。


「・・・ほどほどにしとけよ」
「はあい!!」


早く部屋に戻ろう。

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