「っけほ、」
「去年も、こんな状況になってた気がするな」
「申し訳ない・・・」


しゃがれた声で、苦笑する征くんに謝罪する。
季節はすっかり冬。空気も冷たいし手も足も冷たい。夏よりは冬のほうが好きだけれど、寒いのは苦手だ。温度差に弱い私の体は悲鳴をあげるのがとてつもなく早いから。

青峰と付き合うようになってから、半年以上経った。少しくらい遠慮されるもんだと思っていたけれど、みんな青峰と付き合う前となんら変わらない接し方をしてくれる。
遠慮されてたらさみしいなあって思ってたから、万々歳なんだけど。

つまり何が言いたいかって、彼氏である青峰を放り出して代わりに看病してくれてる征くんパねぇ。
まぁ、勉強面ではてんでダメな青峰に授業をサボらせるわけにはいかないからね、うん。
その点征くんは優等生の鏡だし、先生も口出しできないもんね、うん。・・・我が彼氏ながらほんとにバスケしか頭にないやつである。


「熱は?」
「んー・・・ん」
「見せてみろ。・・・けっこうあるじゃないか。これで体育の授業を受けようとしてたのか」
「はは・・・」
「また倒れたらどうするんだ。大人しくしてろ」
「返す言葉もございません・・・」


軽く額を押されて、大人しくベッドに仰向けに寝転ぶ。
体温計をしまう音が聞こえた。なんとなく視線をすべらせて保健室をぐるりと見渡す。
確か、去年も先生がちょうどいなかったんだよね。
倒れて、起きたら征くんがいてくれてた。それから、珍太郎や青峰も駆けつけてくれて。

ふわり。
男の子とは思えない、私よりもいい匂いなんじゃないかと思わせる香りが鼻腔をくすぐって、視界に征くんが現れた。
はたから見たら恋人みたいに見えてしまいそうな距離感に、不覚にも胸が高鳴る。ごめん青峰。

そして、優しい瞳で微笑んだ征くんは、私より一回り大きな手で私の瞳を覆う。


「去年もこれしてくれてたよね」
「ああ、落ち着くだろう?」
「うん」
「眠るまでここにいる。気にしないで寝ろ」
「ありがとう・・・」


うとうと、早速重くなり始めたまぶたに逆らわず、瞳を閉じる。
真っ暗だけど不安はない。
むしろ安心しかない。心地いい。


「・・・せいくん、」
「なんだ?」
「・・・・・・おやすみ・・・」


半ば寝言のように呟いた言葉に、征くんは小さく笑って。


「ああ、おやすみ」


風邪を引いているのに、いい夢が見られる気がする。
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