「おもろい?」


静かな空間に、落ち着いた声がすとんと落ちた。
一人将棋盤に向かっていた僕は、声のする方を向かないまま、返事もしないまま。
見えない相手の駒を動かす。
彼女は別段気分を害したわけでもなさそうな顔で、僕をのぞき込んできた。


「邪魔だよ、久遠」
「だって暇やし」
「・・・おい」
「これは、どう動ける駒なん?」


桂馬を手に、悪気のない笑顔で久遠は言う。
思い通りにならないことは嫌いだけれど、彼女のその笑顔に悪い気はしない。
細い手から桂馬を奪って、元の場所に置いた。


「つまらん。赤司もしょーぎに夢中やし」
「君もなにかすればいいだろう」
「だってこの部屋、むずかしい本しかあらへんやん。ゲームとかないん」
「ゲームに興味はないよ。その難しそうな本を読んでみたらどうだい」


からかいを含めた言葉に、久遠は気づいただろうか。
そっと彼女の様子を伺うために将棋盤から視線をあげると、ばっちりと目が合った。

そして、久遠は嬉しそうに笑う。


「やっとこっち見た。赤司、遊ぼ」
「・・・はぁ」


首の後ろに回った細い腕に、僕はまだ途中だった将棋盤を放り出して応えてやる。
ゆっくりと彼女の腰に腕を回せば、嬉しそうに笑う声がした。

すぐ飽くのに凝りたがる手

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