恥ずかしい夢を見てた気がする。
体温計を脇に挟みながら、今日見た夢を思い出した。
凛に、告白されて、触れるだけのキスをされる夢。わたしの欲望の塊みたいな夢だった。
恥ずかしい。

いつの間にかわたしの体はベッドの中にあって、一度起きた時まで居たはずの凛の姿はなかった。
ピピ、と音がして体温計を見てみる。・・・熱は、ちゃんと下がったみたいだ。
じゃあ顔が熱いのは、あの夢のせいか。
ああほんと、なんて夢を見てるんだろう、わたし。
頭を振って、ベッドから出て冷蔵庫をあさる。


「・・・あ、」


凛が持ってきてくれてたプリンが、目に留まる。
あとで、真琴と遙にも連絡しとかないとなぁ・・・きっと、心配してくれてるだろうから。



ジャージに着替えて、屋内プールまで足を運んだ。
進路のことで忙しいはずの御子柴部長が、ホイッスルを片手に指示を出す大きな声が聞こえた。そういえばまだ、お守り渡せてないな。
いつが試験って言ってたっけ。
そう思いながら屋内プールに足を踏み入れれば、わたしに気づいた部長が驚いたように目を見開いた。


「お前、もう体は大丈夫なのか?」
「はい、熱は下がってますし。あ、それやります」
「お、おう・・・ほんとに大丈夫か?」
「大丈夫ですって」


ホイッスルを半ば奪うように部長の手から受け取る。するとその空いた手をわたしの額に置き、部長は大丈夫そうだなと笑った。
また、そうやって子ども扱いする!

むっとして部長を睨めば、今度はほんとに大丈夫そうだなと豪快に笑われた。・・・部長はいつでも、部長のままだ。


「・・・久遠?」
「久遠さん!」


後ろから聞こえた声に振り向くと同時に、少し心臓が跳ねた。
水で髪の毛を湿らせた凛と似鳥くんが、部員の分のスポドリを手に、さっきの部長と同じような驚いた目でわたしを見ている。

視線が無意識のうちに凛の唇に向かってしまう。
っ、ダメ。あの夢のことは忘れないと。


「もう大丈夫なんですか?」
「うん。ごめんね、それもやるよ」
「いえ、もうここまで来ましたし最後まで運びますよ」
「ありがとう。・・・凛は、」
「・・・病み上がりのマネージャーに重いもん持たせるわけねぇだろ」


どこか不自然に逸らされた瞳。
不思議に思って凛を見つめたままでいると、何故か凛は小さな声で謝ってきた。


「・・・ワリ」
「・・・?なにが?」
「・・・・・・いや、なんでもねー・・・」


変な凛。
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