「っだからマジで無理なんだってぇ・・・!」


あ、やばいと咄嗟に背中で久遠を隠す。
だけど遅かったようだ。後ろに目があんじゃねぇの、と思うくらいに素早く赤司が振り向く。緑間も振り向く。黒子も若干眉根を寄せて振り向く。


「青峰。なぜ久遠が泣いている?」


赤司って透視能力でもあんのか。
赤司の言葉に黄瀬が「え!?」と驚いたように持っていたアイスを落として振り向き、ついでに紫原まで振り向きやがった。・・・めんどくせぇ事になった。
少し先を歩いていた緑間と黒子が早足で歩いてきて、オレの後ろで涙を流す久遠の顔を覗きこんだ。


「久遠さん?どうしたんですか?」
「青峰に何かされたのか」
「してねーよ!」
「なんで久遠ちん泣いてんのー?」
「うわっマジで泣いてる!久遠ちゃん大丈夫っスか!?」
「吐け青峰。久遠に何をした」
「だからなんもしてねーって!未遂だって!」
「「「「「・・・未遂?」」」」」


オレと久遠以外の五人の呟きが重なる。あ、詰んだコレ。
うええ、と女らしからぬ久遠の泣き声だけが薄暗い道にやけに大きく響いた。冷や汗が垂れる。
こいつらの無言の圧力(赤司の眼力は桁違いにやばい)が降り注ぎ、観念したオレは重い口を開いた。


「・・・久遠が、毛虫がどうしようもなく苦手って言うから・・・」
「「「「「言うから?」」」」」
「冗談で制服についてるぞって言ったら、泣いた」
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」


ぞろぞろ、久遠を取り囲んでいた赤司たちは呆れたように歩き始めた。


「ちょっと!?なんで!?毛虫怖いじゃんイヤじゃん!青峰氏さいっていだよそんな嘘!」
「いや、それでマジ泣きできる久遠ちんもすごいと思うよー」
「だってほんとに苦手なんだもん」
「小学生ですか君たちは」
「しょっ・・・!?」
「おいテツ!こいつはともかくオレまで餓鬼扱いすんな!」
「好きな子はいじめたくなるって奴っスか。かゆっ」
「黄瀬つぶすぞ」
「りょた君かいてあげるよどこがかゆいの?」
「いたっ!?え!?なんでオレ今叩かれたんスか!?」
「うるさいぞお前たち。近所迷惑だ」


黄瀬を殴りながら、久遠と目を合わせる。
「・・・悪かったよ」呟けば、久遠はまだ潤んでいる目のまま拗ねたようにそっぽを向いて手を握ってきた。

そんな、なんてことない帰り道。

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