「・・・なんでてめぇが此処に居る」
低い声にクオンは一瞬眉根を寄せた。
それ以上に、声の主であるメロはしかめ面をしている。
理由なんて本当にくだらないけれど、と小さな声をこぼす。メロなら、わかっているでしょうと。
「わかりたくもないな。俺はそんな愚かなことはしない」
顔の半分が火傷のせいで痛々しい姿になってても、
どんなに罪を犯しても、クオンの気持ちは変わらなかった。
いじわるで、まっすぐで、不器用な人。だけど、本当は優しい人。
もう後戻りなんてできないの。
わたしはわたしの意思でここにいる。
「・・・・・・・救いようのない馬鹿だな」
泣きそうな顔をして、メロは緩く口角を上げた。
伸ばされた手を拒むことなんてしない。できるわけがない。
互いの冷たい体温を感じながら、地面に膝をつく。
だって、寂しかったの。
メロ以外なにもいらなかったのに。突然真っ黒になった世界で、生きていく術なんてなかったの。
細められた瞳が、近づいてくる。クオンはそっと目を閉じた。
「・・・馬鹿」
そんな馬鹿を傍に置いたのは、あなたでしょう、メロ。
重なった唇は、冷たい。
冷たいのに、心地よい。温かく感じる。寒くない。もう寂しくない。
やっぱりこれでよかったのだ。
だから、死ぬときは一緒って言ったでしょう。
来世なんていらないの。わたしは死んでも、メロと居られたらそれで。
「・・・ふん」
死んだ先に行き着くのは"無"だ。死は皆平等だ。
誰かの声が聞こえた気がした。
終極の丘まで