大きな音が響いて、腰から落ちた久遠はうめき声を上げた。
生理的な涙が目じりに溜まる。
すぐ傍にヒルコを纏ったサソリが降り立ち、重いため息を吐いた。木から木へ飛び移る際、足を踏み外したのはこれで・・・何回目かも分からない。
忍が運動オンチでどうすんだ、と出かかった言葉は喉の奥にしまいこむ。言わんとしている事は、きっと久遠にもわかってるはずだ。
反論の余地などないから、黙って起き上がろうとすれば、反射的に痛む足首。


「・・・てめぇまさかとは思うが、」
「ごめん!ほんっとうにごめん!!傀儡のメンテナンス手伝うから置いてかないで!」
「ここまでくると呆れ通り越して感心ずるぜ」


じくじくと痛み出した足首に、久遠は土下座する勢いで額を地面につけた。
サソリは小さく舌打ちする。
視線をずらして久遠の足首を見れば、早くも赤く腫れ上がり始めていた。
アジトまで走ればあと十分。どちらにしろ、ヒルコのままではおぶろうにもおぶれない。

再度舌打ちをして、サソリはヒルコを巻物にしまった。


「相変わらずの美男子だね・・・サソリ・・・」
「おぶってやらねぇぞ」
「ごめん黙る。黙るからほんと!お願いします!」
「いちいちうるせぇな・・・」


ん、と決して広くはない背中を向けて屈み込めば、「ありがとう」という嬉しそうな声音と共に久遠の体温が伝わってきた。
首の前で交差された細い腕の感触を確認して、サソリは地を蹴る。

砂の里に居たときから、久遠はこうだった。
なにかに挑戦するたび運動オンチもあいまってドジを踏み、つっけんどんな態度を取りながらも内心ではヒヤヒヤしていたのだ。
だが、ここまで他人のことを心配できるのも久遠だからだ。他の奴にはこんな世話なんて焼かない。
里抜けするときも当たり前のようについてきた久遠が大切で。
それが正解なのか間違っていたのかは今でも分からないままだ、お互い忍の世界の残酷さは身を持って理解している。

それでも、久遠だけは、そんな世界から守ってやりたいと思う。


「水で冷やして一日安静にしとけ」
「動かなかったらいいんでしょ?メンテナンスのお手伝いしたい。ていうかサソリと居たい」
「・・・・・、勝手にしろ」
「サソリの部屋で寝ちゃってもいい?」


甘えるように、頬に頬をくっつけられる。
やめろ、とこぼしながらサソリは拒むことはしなかった。これは、肯定である。


「やった。ありがと、サソリ」
「はっ・・・いまさらだな」
「うん、・・・ありがと」


ころがった僕のいとしいそれ
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