明日一日中働くから、すまないが当番を交代してくれないだろうか。
はしゃぐ久遠を思い浮かべながらすぐ近くにいた男子に話を持ちかければ、彼は快く引き受けてくれた。


「うちはも大変だな!」


屈託のない笑みを浮かべてそう言うクラスの男子に首を傾げる。
なにに対してそう言われるのか、わからなかった。ただ少し、その屈託のない笑顔が久遠に似ていると思う。
あいつも、こんな風に、屈託のない眩しいくらいの笑顔でいつも傍に来てくれる。


「楸に振り回されてんだろ?あいつ中学の時も一個上の長門先輩にベッタベタでさ。まぁ、同じトコの出だし当たり前かーって俺らは生ぬるい目で見てたよ」


聞けば、久遠と同中らしい。
嫌味な感じに言っているわけでもなく、たぶん彼は良き友として久遠に接してくれていたのだろう。
元来人見知りをしない久遠のことだ。今はオレ達にベタベタだとはいえ、それ以外の友達も多くいたはずだ。

オレの知らない久遠がいるというのはなんとも複雑な気持ちではあるが、やはりあいつは愛されるキャラなのだと思えば少し誇らしくなる。
つくづく、オレも絆されたものだ。なんて今更だが・・・


「ま、楽しんで来いよ」
「ああ、ありがとう」

***

指定の場所へ向かえば、そこにはすでに久遠とサソリ、長門、デイダラが居た。
どうやら一番最後の到着になってしまったようだ。
ぶんぶんとちぎれんばかりに腕を振る久遠に苦笑する。


「すまない、待ったか?」
「ううん!!みんな今来たところだよ!さぁさっそくチョコバナナ買いに行こう!」
「待て、てめェなんだそのチョイスは」
「卑猥なこと考えてねーだろうな・・・うん」
「卑猥・・・?どういうことだ久遠ちゃんとオレにわかるように説明してみろ」
「まっ・・・!長門の端正なお顔がとてつもなく怖いことになってる!!」


呆れるサソリとデイダラ、そして詰め寄る長門。
なんというか、本当に喋らなければ素直に可愛らしいと褒めることができるのに、こいつは変なところで素直すぎる。
無駄美人とは、このことを言うのだろうか。

とりあえず校舎内を回ることになり、隣に並んできた久遠の頭に無意識に手を置いた。
オレのこれはもはや癖のようなものだ。
こいつとオレの身長差と、ふわふわとした頭は思わず撫でたくなってしまう。
そこでふと、当番を代わってもらった男子のことが頭に浮かんだ。


「久遠」
「んっ?なに?」
「中学で特に仲の良かった男子はいるか」
「中学ー?え、まさかイタチ嫉妬・・・じゃないですねゴメンナサイ」
「・・・茶髪を少し遊ばせた感じの奴が、お前のことを面白そうに話していた。そいつに当番を代わってもらったのだが」
「え!イタチは色気で女子に任せてきたと思ってた!」
「香水の匂いは嫌いだ」
「編入してきたとき、嫌そうな顔してたもんね!そんなイタチに萌えを感じてたよ!また見たいなあ!」
「お前はあの匂いの群れの中に突っ込めと言っているのか」
「冗談デス」


頭においていた手に少し力を込めれば、すぐに観念した久遠が屈託のない笑みを見せる。
その笑みに、つられて口角を上げればますます嬉しそうに笑った。

男子の特徴を話せば、久遠はすぐに「ああ!」と手を叩いた。


「太郎ちゃんでしょソレ!鈴木太郎!」
「そういう名なのか」
「太郎ちゃんはいい子だよ!イタチが太郎ちゃんと仲良くしてるの今度クラス行ったときに見てみるね!」
「まだ仲がいいとは言えな、」
「男同士!それもまたアリだよ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


こいつはいったい何を考えているんだ。
キラキラと目を輝かせながら見上げてくる久遠から視線を逸らす。
慣れたのは慣れたが、たまについていけないな・・・
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