久遠が席を立った数十秒の間だけでハルと真琴は「二人でなにしてたんだ」「デートなの?付き合ってたの?」「最近久遠に変わったところはないのか」「ちゃんと友達いるのかな?心配だなぁ・・・」「そういえば鮫柄のアイツ、似鳥とかいう奴と仲がよさそうだったがアイツは久遠の何だ?」「それを言ったら御子柴さんもだよね、久遠、誰かと何かあったりしたの?」・・・見事なまでの過保護っぷりを見せた。
答える暇もないまま戻ってきた久遠に内心安堵する。なんだコイツら、気持ち悪いくらい久遠のこと大切にしてんだな。
・・・これは、道のりは長くなりそうだ。

確かに、久遠は贔屓目なしに見ても可愛いと思う。
不器用であまり得意分野というものがないから守りたくなってしまうのも理解できる。
恋愛沙汰がどうとかは聞いたことがねぇし(つーか久遠に気がありそうな奴は片っ端から睨みつけて撒いてたし)あいつが友達と一緒にいるところも見たことはなかったが、毎日充実しているようには見える。
もともと一人でいることを苦に感じないタイプなのだ。


「・・・そろそろ帰らないと」
「そうだな」
「もう帰るのか」
「鮫柄って門限とかあるんだ?」


普段表情を変えないハルが目に見えてわかるくらいに表情を変えるのは、久遠が絡んでいる時だけだと思う。
同じような顔で真琴も寂しげに眉尻を下げていた。
俺は部活でも学校でも会えるからいいとして、コイツらは寂しいんだろうな。
そう思わせるくらいに、久遠の存在はコイツらの中で大きなものなんだろう。


「もう暗いし、送っていくよ」
「凛がいるから心配はしてない。俺達が久遠ともう少し一緒に居たいから送る」


内心他の事に対して心配しまくりな癖に、と思いながら俺は帰る支度をする久遠を振り返る。
そう言われてしまっては断れないのか、久遠は小さく頷いた。



少し前を歩くハルと久遠の背中を眺めながら、真琴と二人ゆっくりと歩く。
真琴だって久遠と喋りたいんだろうなと思いながらもこの状況に納得していた。きっとコイツは俺に聞きたいことを聞く時間を設けている。

何を聞かれたって俺の気持ちは隠さない。隠したって無駄だということはわかっているし、もし久遠と俺の気持ちが通じ合うことがあったなら、真っ先に伝えるべきはコイツらだと思っているからだ。


「凛は、久遠のこと好きだよね。もちろんそういう意味で」
「疑問系で聞いてこないところ、あいつに関しては本当に過保護だなお前も」
「まぁ・・・自覚はしてるよ。久遠に煩わしく思われても、やっぱり大切だから心配だし」
「・・・別に、煩わしくは思ってないと思うけど。ただアイツもお前らに心配ばかりされるようなままでいたくないだけだろ」
「ふふ、久遠のこと、よくわかってるな」


・・・お前らほどじゃねぇけど。
なんてことは、悔しいから言わない。

前を歩く二人は普段からあまり声の大きいほうではないからここからアイツらの会話は聞こえない。
幼馴染みってだけで兄弟ではないから、ハルだって久遠のことそういう目で見ることがあるのかもしんねーのに、部長に感じてるような嫉妬や焦りは出てこなかった。近い距離をうらやましいとは思う。
なんでかは分からない。


「俺ね・・・、きっとハルも、凛ならいいって言うと思うんだ」
「は・・・」
「久遠のこと、よろしく」
「っ何言ってん・・・!」
「凛!電車来ちゃってる!走って!」


真琴の言葉を頭で理解した途端頬に集まる熱。
同時に久遠に名前を呼ばれ、言いかけた言葉を喉の奥にしまい込む。
いつの間にか駅に到着していた。振り返ったハルが、早くしろとでも言いたげな視線を送ってくる。
ヒラヒラと手をふる真琴は、楽しげなようで寂しげな、そんな瞳をしていた。
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