お守り作るにしても、まずは材料が必要だろ。
そう言う凛にじゃあ今度のオフの日に買い物に出ようと提案した。特に用事もなかったらしい凛は、すぐに頷いて少し笑った。
相変わらずぶっきらぼうではあるけど、あの日を境に少し丸くなった気がする。
部活の時、そういう話を似鳥くんとしたら、彼は「自分では気づいてないかもしれませんが、久遠さんもですよ」と苦笑しながら言われた。

待ち合わせ場所は、自動販売機の前。
まだ何ヶ月と経ってないのに、ここで交わした会話だとかが頭の中に浮かんだり消えたり、早くも懐かしく感じる。
そういえばあの時、凛は何を言おうとしたんだろう。

"明日、あいつに勝ったら"


「・・・おい」
「あ」
「あ、じゃねーよなにボーっとしてんだ。行くぞ」
「待って、ジュース買ってから行く」
「わざわざここで買ってく必要あんのかよ・・・」


呆れた声で言いながらも、ちゃんとわたしを待ってくれる。
お金を入れようと鞄をまさぐっていたら、ポケットにつっこまれていたはずの凛の手が横から伸びてきてちゃりん、と小銭入れに投入される百円と五十円。
そのまま凛はいつもわたしが飲む炭酸ジュースのボタンを押した。


「これだろ」
「・・・どうしよう凛が優しい」
「もうちょっと可愛げのある台詞が言えねぇのかお前は・・・!」
「アリガトウ」
「棒読みかよ」


頭をぐしゃぐしゃにされながら、わたしはかがんで、出てきたジュースを取り出す。
頬が熱い。きっと赤くなってるんだろうな。バレないといいけど、

もー。なんで急にこんなことするの。凛の馬鹿。



オレンジのフェルトを基盤にしたお守りを作ろうと思っていたし、大体のイメージは事前に二人で話し合ってたから目的はすぐに果たせた。
すぐに帰るのもなぁ、と思って凛を見上げたら、「腹減ったしなんか食おうぜ」と提案してくれた。凛のおごりらしい。わたしが連れてきたようなものだから、少しは払わせろと足を蹴った。


「ってぇな・・・!使いもんにならなくなったらどーしてくれんだテメー」
「お金に困ってるわけじゃないし自分で払うもん」
「・・・こーゆーのは男に払わせとけばいいんだよ」
「わたしがいや」
「・・・・・・・・わかったよ」


にらみ合いの末、勝利した。

喫茶店に入って、大好きなオムライスを頼む。
凛はスパゲッティを頼んで、ほぼ同時に来たそれを黙々と食べた。

凛はとても顔が整っていると思う。
食べ方もすごく上品だし、スタイルもいいし、さりげなく気を利かせることができるから、同学年から下学年、さらには上学年の女の子からも好意を寄せられてる。
不運にも男子寮で一年間過ごすことになったわたしのこともきっと気にかけてくれてたし。
遙や真琴に言ったら絶対に血相を変えて慌てだすに違いないから男子寮で過ごすことになったことは黙っててくれた。

昔から、凛は、遙や真琴とは違う接し方だった。
なにもできないわたしをかわいそうとか、守ろうとか、そんな目で見てこなかった。
できないならできるようになればいいって、一緒にがんばろうとしてくれた。

だから、わたしは、
わたしはずっと―――


「・・・なに見てんだよ。食いづらいだろ」
「、あ・・・見てた?ごめん」
「素直に謝るとか気持ちわる」
「水ぶっかけてやる・・・!」


冗談抜きで水の入ったコップに手を伸ばしたら、「冗談だよ馬鹿」と少し慌てた凛がわたしの手首を掴んだ。

ねぇ、凛。
凛はわたしの特別なんだ。
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