「それにしても・・・もったいないなぁ〜」


デイダラと再会できた喜びと興奮を抑えきれないままそれでも裏方の仕事に徹する久遠を見ながら、山田とかいう奴が呟いた。
反応するのもめんどくせぇから無視して自分の仕事をやっていれば、山田はそのまま話を進める。
何かあるごとに久遠に絡んでいくこいつのことは、好きではないが嫌いでもない。
ピンクい色を含んだ目でオレを見るあのうぜぇ女どもとは違うことを、一緒のクラスで過ごしてきて理解しているからだ。
こいつはただ、オレと久遠の絡みを楽しみながら傍観している少し変わった奴だった。


「久遠ちゃんなら絶対、裏方より表にでて接客したら注目浴びると思うんだけどな〜・・・ねぇ、サソリくんもそう思わない?」
「久遠が接客?」
「そう!あ、サソリくんと二人で表の仕事したらそれはもうこの喫茶店は大繁盛だよ間違いなく!二人ってお似合いだし!!」


拳を握って熱く語る山田。こいつはこんな奴だから、久遠と仲良くできるのだなと今更ながらに納得した。
まぁ、お似合いだという言葉に悪い気はしない。
・・・だが、久遠は人見知りしなくて基本人当たりがいい分、オレが見ていないところで誰かに何かされたらと考えるだけで腹が煮えくり返りそうなのだ。
オレが裏方を希望したのは慣れもしねぇ笑顔を浮かべなければならないのがめんどくさいのともう一つ、そういう理由がある。
長門かよオレは・・・と過保護になりつつある自分自身にため息をつきながら、コーヒーの粉を紙コップに入れた。


「あ、でも久遠ちゃんって隣のクラスのうちはくんとも仲良しだよね〜」
「・・・あー」
「そんでもって毎日放課後とかには絶対一個上の長門先輩も迎えに来てるよねっ!?」
「そうだな」
「・・・っ逆ハーレム!!!なにそれおいしい!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


鼻息を荒くし始めた山田が軽く久遠と被って見えてオレは少し身を引いた。
こいつもアレと同じ感じなのか。もっとまともな奴だと思ってたぜ。


「なにお話してんの花ちゃん!サソリさんはあたしんだよ!」
「わかってるよ久遠ちゃん!サソリくんは久遠ちゃんのだもんね!そんでもって久遠ちゃんがサソリさんのものになるわけでもなく、久遠ちゃんはみんなから愛されてるんだね〜!!ハァこの先の展開が楽しみすぎて土日いらないくらいに毎日学校あってほしい・・・!」
「愛されてる!?あたし愛されてる!?花ちゃんそれもう一回言って!say!!」
「久遠ちゃん愛されてるぅぅぅううう!!」
「・・・コーヒー二人前、できたぜ」


駄目だコイツら。
オレは痛くなってきた頭をそのままに出来上がったコーヒーを表で働く奴らに差し出した。
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