きっかけは、なんだったか、まぁ結論から言えば私がものすごくドジで運がないのが悪いのだろうけど。


「久遠、昼飯はどうするんだ」
「お弁当忘れたからこうばいに、」
「購買だと!」
「う、うん」


またやってしまった、と私は内心頭を抱えた。
目の前でしばらく固まってしまった緑間君は、いきなり私の両肩を掴んで前後に揺さぶる。
わわわわわ待って首もげる・・・!


「何を言っている!あんな人ごみにお前が行ったらどうなるか理解して言っているのか久遠!駄目なのだよ!オレが買ってきて、・・・いやもういっそオレの弁当を食え!」
「緑間君こそなに言ってるの・・・大丈夫だよ」
「いいや、お前の大丈夫は信用できないのだよ」
「えー・・・」
「オレが購買で買って食べる。だからお前はオレの弁当を食え。いいな?」
「えええ・・・」


ちゃ、とすばやく緑間君の弁当であろうでっっっかい入れ物を受け取って彼を見上げれば、緑間君は任せていろとでも言いたげな表情をしながら私の頭を数回撫でた。

そして遠くなる背中を見送りながら、私は手元の弁当を見下ろして小さくため息を吐く。
くっくっく、とくぐもった笑い声にむっとしながら隣を見れば、案の定高尾君が肩を震わせていた。


「高尾君・・・」
「っワリ・・・!はぁやべ何アイツおもろすぎんだけどっ・・・!っぶわっはっはっは!!」
「笑いすぎですけど」


緑間君の"アレ"は、今に始まったことではなかった。
いつだったか忘れてしまったけれど、確かたまたま彼が欲するラッキーアイテムを私が所持していて、一日貸した時にある出来事が起こったのだ。
まぁ私としては日常茶飯事なドジを踏んだだけなのだけれど、彼は自分がラッキーアイテムをとってしまったから、ととても申し訳なさそうな顔をしていた。


『この責任は必ず取るのだよ・・・!』


許せ、とさっきのように両肩をつかまれて、そう言われたのは今でも鮮明に覚えている。
その時はまだ仲良くなっていなかったというかむしろ一言も話したことのない相手だったから、その(見た目だけは)イケメンな緑間君に胸がどっきんどっきんと高鳴った。


「真ちゃんマジだな、ふっ」
「高尾君ってツボ浅すぎだよね」
「楸さんと真ちゃんがおもろすぎんの!」
「部活でもそんななの?」
「否定はしねー!」
「・・・・・・・・」


しろよ、と内心思いながら弁当の包みを開ける。
これ絶対一人で食べれない量だよね・・・中を覗けば、偶然か、私の好きなものばかりが詰め込まれていた。
緑間君のお箸だから私のよりも長くて使いづらそうだ。
でも、せっかく行動を起こしてくれた(ほぼ強制的にだけど)彼にも悪いから、遠慮なくいただくとしよう。


「おいしい・・・」


ニヤニヤと口元に手を当てたままの高尾君を尻目に、から揚げをつまめば予想以上のおいしさが口内に広がった。


「あの料理苦手な真ちゃんが自分の手にキズつくりながら作ったんだもんよー」
「え?これ緑間君が作ったの?すごい・・・」
「・・・つーか、まぁ、うん。真ちゃんにちゃんとお礼言ってあげろよ?」
「当たり前だよ。いつもいつも悪いなぁ」
「って思いながらもちょっとは嬉しかったりする?」


核心をつく高尾君の言葉に、私は動かしていた手を止めて彼を見た。
すべてお見通しなのか、高尾君はにんまりと笑って私を見ている。


「それ、真ちゃんがわざわざいつものウン倍早起きして作った弁当なわけよ」
「・・・・う、うん」
「楸さん鈍感じゃないし、この意味わかるっしょ?」


暴れだした心臓とほてった頬を、緑間君が帰ってくる前になんとかしないと。


どれくらい叫べばそっちに届く?
ああもう、
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