戦争なんてして、意味なんてあるのか、なんて考える暇もなくそれは始まった。
木ノ葉だとか砂だとか、岩だとか・・・まぁ、色々なところから集まり結成された忍連合軍の額宛てをポーチの中に入れたまま、愛刀を振るいまくる。

本当に、いつの世も戦いばかりで、飽きないなぁ。
こんな残酷卑劣な忍の世界でも、個々に光というものは確かに存在しているのだろう、だけど私にはそれがない。・・・亡くなってしまった。
大して強くもないくせにしぶとくて白い物体を切りながら、それでも戦う理由なんてあるのだろうか、なんて一人場違いにも考える。

いつでも無表情なのに、その瞳に憂いを交えているのには気づいていた。
どこで出会ったとか、どうして出会ったとか、出会うべくして出会ったのかとか、私には考えても分からないけど、とても大切・・・だった人。


「久遠!!!」


私を呼ぶ声がする。同期の仲間としていくつもの死線を共に乗り越えてきた、高くてよく響く声。
白い物体が笑いながらクナイを振りかざしているのを見た。

ああ、私はここまでなのだな。
やっと、彼の元に行けるのだな。
思い残すものなんて、すぐに浮かんではこないのに、こんなときでも脳裏をかすめる赤い彼の姿が、ぼやける。

愛刀が手から滑り落ちた。
もうすぐ迎えるであろう死は、痛いのだろうか。これで私も、"永遠"になれるのだろうか。


「馬鹿かてめぇは」
「・・・!?」


ありえるはずのない、声を聴いた気がした。
胸を貫くはずだった痛みもなにも、ない。閉じかけていた目を開ければ、今にも消えそうな、


「さ、そり・・・?」
「お前がこっちに来るのはまだ早ェだろうが」


馬鹿、ともう一度呟いて、彼は私の頭を引き寄せる。
何が、起こって、いるの。だって彼は、彼は死んだはずなのだ。

頭ではそう思っているはずなのに、いきなり目の前に現れたサソリの背中に咄嗟に手を回した私は、一体、


「待つのは大嫌いだ・・・が、お前のことは待っててやらんこともない」


感謝しろよ、と、サソリは笑い、前髪を掻き分けて私の額に口付けを落とした。
混乱する頭の中で、サソリがあの白い物体から私を助けてくれたことだけを理解した。
途端、しまっていた悲しみとか、愛しさとか、むなしさとか、意味分からなくなって、声も上げないのに勝手に頬を滑る涙は、もうどうしようもできなかった。


「泣き虫やろうが」
「っ、さそり、!」
「頼むから、ゆっくり、てめぇのこれからを歩んでからこっちに来い」
「待って、サソリ、行かないで・・・!」
「なに言ってる。待ってやるっつてんだろうが」
「っサソリぃ・・・!!」


もうほとんど消えかかってる手で私の涙を指でぬぐって、サソリは言った。


「生きろよ久遠。オレのために生きろ」
「サソリ、サソリ、好きよ、サソリ!」
「久遠、―――」


手を伸ばして、舞い上がっていくサソリに手を、伸ばして。
足元には、誰かさえも分からない死体が転がった。


あいしてる
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